私にしか見えない人

泣きそうになるのを必死で我慢して、私は「いい天気だなー」と片言で言いました。

そして自然を装って、自分のデスクに座ったのです。

いつもは窓の外を眺めているはずのその人は、しばらく私を見つめていました。

注意深く見ていました。

その圧迫感に生きた心地がしなかったです。

私はパソコン画面を立ち上げ、ひたすらほかの職員が早く来ることを祈りました。

その祈りが通じたのかそれからすぐに別の職員が来て、しばらくその人と世間話をしていたら、いつの間にか私への視線は途絶え、私にしか見えない人はいつものように窓の外を眺めておりました。

我慢してしばらく働いてみたけど、怖さには勝てませんでした。

私は窓の傍に佇む人のストレスに耐えかねて、最終的に3か月で胃のトラブルを理由に仕事を辞めました。

いまだにあの幽霊がなぜ私にだけ見えたのか分からなくて、不思議に思います。

あの職場では今年もまた人が辞めるのでしょう。

この経験を機に理由もなく人が辞める職場って、きっと何かいるんだと思うようになりました。