次に女の夢を見たのはそれから三週間くらい間を開けてからだった。
その日も決まってカーテンから向かいのマンションに女が居ないか確認するが、居ない。
このパターンは他の人を追いかけているパターンであり、私はとも子以外が夢の世界に現れるようになってからというもの、規則性のない展開にどう対処すべきか逆に困っていた。
このまま家に籠城していれば逃げ切れるだろうか?
もしかしたら他の人たちが囮になっている間に1日くらいは余裕で逃げ切れるのでは、と考えていた。
どうせ夢の中で死ぬことはない。
ただ怖い体験をするだけだから、と自分に言い聞かせるが、汚い思考を練る自分が心底最低だと思えてならなかった。
そんな邪な私を粛正するようにマンションの階下から『アアアアアアアッ』とあの女の絶叫が聞こえる。
こうして家の中で考え事をしている合間に、女は私を標的にしたのだ。
私が慌てて玄関から飛び出してどうにかここに上がってくるまでに逃げ出せないか試みてみるが、玄関を開いた瞬間に廊下の端から女がこっちに向かっているのが見えて絶望した。
女は顔の半分くらい大きく開いた口から『アハハハ』とくぐもった声を出しながら首をギギギと捻り、今にも腰を抜かして座り込みそうな私の足に飛び掛かると同時に掴み、手繰り寄せる。
私は「あああ、やだやだ!」と地面を引きずられるが、女が私の首元に噛みつくように接近すると、私は目を覚ました。
凄まじい寝汗の量だったが、今回も『捕まったその先の光景』を見る前に目を覚ますことができた。
最初の頃はこうして寝汗びっしょりで飛び起きていたが、今回は油断していた手前、精神的な準備が間に合わずに随分と取り乱してしまった。
そのせいでいつもよりも早く捕まってしまったが、やはり人が増えたことで逃げる為の選択肢が増えたように思える。
私は「次こそ最後まで逃げ切れるんじゃ…」と淡い期待を抱いた。
次に女の夢を見たのは二ヵ月くらい過ぎてからだった。
間が空きすぎて感覚が掴みづらくて焦りはしたが、決まってカーテンから外をチェックする習慣は欠かさない。
今回は女が私の向かいのマンションに居ないパターン。
私は早々に籠城を放棄して、マンションの外に出る。
やはり逃げ切るには学校が最適な環境だと思い、学校に向かうが、道中で遭遇する可能性もあるので路地を挟むたびに隠れては四方八方を安全確認しながら進んだ。
私の予測は当たり、遠くから女の『アアアアアッ!』という絶叫が聞こえると、決まって誰かの「きゃあああああ!」という戦慄を含んだ悲鳴が聞こえた。
そのたびに私は声の方向から距離を取るようにして学校まで迂回して進んでいった。
正直、悲鳴が聞こえたら反対側に逃げる、というのを繰り返しているだけで随分の時間を消費できたので、他の人には悪いがかなり助かっている。
それに今までよりもかなり人が増えているのか、例えば平日の住宅街程度にはちらほらと人を見かける事がある。
これもとも子がブログで広めた効果か、それともブログを通して同じ夢を見た第三者が更に広げた効果か。
私には分からないが今頃とも子もどこかで女から逃げているのかと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
そして学校に到着すると、いつも常駐に使う三階の教室に向かう途中でとも子と鉢合わせした。
「…え、〇〇子?」
「とも子」
























1本の映画をみた満足感!
↑それな 面白かった映像で見たい
カラダ探しっぽい
クッソ怖くて読みごたえがあって面白かった!