首吊り林
投稿者:煙巻 (8)
俺の地元から少し離れた所に『首吊り林』と呼ばれる、自殺スポットがあった。
真相は知らないが、これまで何人もの人がその雑木林で首を吊って自殺しているらしく、ハイキングかトレッキングか何かでその雑木林に入るとたまたま首吊り死体を発見するなんて事もあるそうだ。
俺が小学生くらいの時からそんな噂で持ち切りの場所だった。
そんなおっかない場所に肝試しに行こうと言い出したのは友人のAで、俺が高校一年の頃だった。
仲のいいAを中心に、B、C、そして俺の四人で、週末の夜にでもその雑木林に行く予定を立てていた。
「マジで自殺体あったらヤバくね?」
「それ映して炎上したユーチューバーいたよな」
「ああ、動画見たかも」
なんてくだらない会話をしながら、当日の夜、俺達は雑木林を散策していた。
装備は軽装。
各々懐中電灯を持って、暗くてほとんど何も写らないだろうが一応スマホで撮影できる準備をするくらいで、数時間で帰る予定だったから食料なんかも持っていない、ただのラフな格好。
雑木林と言ってもほとんど山みたいなもんだから下は長ズボンにしたが、残暑で蒸し暑かったのを覚えている。
それで、雑木林に踏み込んでから結構奥深くまで進むと、枯葉なんかで蓋をされているように足場が不安定な場所が出てくる。
木の幹がボコっと出てたり、斜面になっててズルっと滑りそうになる事も屡々。
それこそ、滑落しそうになって「うわっ」と情けない声を上げてずっこけたりもしたが、漫画みたいに滑り台よろしく下っていく事は無く、手をついたら止まるレベルで問題ない程度だった。
服は土まみれになるが、汚れる事は想定内だ。
でも、やっぱり雰囲気だけはしっかりと怖いんだが、目新しい発見が何も無いと飽きてくる。
懐中電灯を向けて「今、何かいたぞ」とAがふざけ始めたのを皮切りに、Bが「あそこの木の所、人が吊ってね?」とか言い出すし、Cは「声聞こえね?」と立ち止まってそれらしくふるまったりしてた。
そんなふざけた事をしていた祟りか、月明かりが出始めた頃に急に冷気が漂い鳥肌が立ち始めた。
何か雰囲気が変わったな、と思い始めると、耳にはっきり聞こえるくらいの距離から『ドサッ』と物音がした。
「「うおっ」」と何人かが声を揃えると、俺達は足並みを止めて各々辺りを見回す。
何か動物が居る訳でも無い。
風が吹いている訳でも無し。
結構な重みのある物体が地面の枯葉をクッションに落っこちた音は確かに四人の耳に届いた。
「今、絶対音がしたよな?」
「俺も聞いたわ」
AとBが懐中電灯を頼りに辺りを確認するが、それらしいものは見つからない。
「元々折れてた枝とかが落ちたんじゃね?」
Cは寒そうに腕を摩りながらそう言った。
俺もCの意見に賛同したが、AとBは「いや、絶対何か居るわ」と音の出所を頑なに探ろうと周辺を散策し始めた。
まあ、元々俺達は自殺体が見つかったらすげえな程度のノリでやってきたわけだから、逆に自殺しようとやってきた人と遭遇することもあるのかもしれないと思った。
俺は「もしかしたら自殺しようと来てる人と遭遇しちゃったんじゃね」と三人に告げると、三人は「それか俺らみたいな肝試しかもな」とそれぞれ想像を掻き立てる。
面白かった!!
やーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー