同窓会のお誘い
投稿者:ぴ (414)
私はそのときに初めて、みんながなんでこんなに騒いでいるのか知りました。
同窓会に参加したのは中学校の頃のクラスメイト十数人です。
みんなよく見知った顔でした。
しかし、参加者の一人が「そういえば沙也加ちゃんって数か月前に亡くなった噂とか聞かなかった?」と言い出し、雲行きが怪しくなったらしかったです。
そこで話している内に、全員この同窓会に出席するにあたって、山川沙也加から誘われたことを知ったのです。
山川沙也加が同窓会を開きたくて、片っ端からみんなにメールしたとしても、それで同窓会に誘った本人が欠席しているのは明らかにおかしなことです。
なんか気持ち悪いねと話している最中に、私は空気も読まずに遅れて部屋に入ってきたらしかったです。
山川沙也加が亡くなったという話を小耳に挟んだと言ったのは、クラスのよくしゃべる男子でした。
小柄でおさるさんみたいな体型は変わらずの子で、なんだか友達から又聞きしたらしく、本当か嘘かは信ぴょう性がないと言っていました。
だったら誰かが代表して山川沙也加に連絡を取ってみようという話になったのです。
こうして話し合った結果、待ち合わせ時間に遅れてやってきた私が罰として代表して電話をかけることになりました。
そこまで特別仲良くもなかったので、電話をかけるときは変な緊張感がありました。
全員の視線が集中する中、その電話が繋がったのでした。
山川沙也加の電話に出たのは、しゃがれた声の男の人でした。
その人は沙也加ちゃんの父親で、そして話していく内に、クラスメイトの一人が言っていたように、山川沙也加がもう亡くなっていることを知りました。
原因は過労死だったそうです。
もともと生真面目で、世間知らずだった沙也加ちゃんは勤めている先がブラック企業だったことに気が付かず、寝る暇もなく限界まで働いて、体調を壊して過労で亡くなったそうです。
生前は誰よりも同窓会や成人式を楽しみにしており、そしてみんなに会えることを楽しみにしていたと聞きました。
あまりに驚きの内容で、私が聞いたままそれを話すと、どよめきが起きてしまうくらいみんなびっくりしていました。
その後の同窓会ですが、さすがにその後気にせず盛り上がるような空気にはならず、暗い空気のまま早い時間に同窓会はお開きとなりました。
山川沙也加の父親はこの携帯からメールを送ったという履歴はないと言っていました。
だから私たちに届いた同窓会のお誘いメールが誰から送られてきたものかは分からなかったです。
ただ山川沙也加が中学生の頃のクラスが大好きで、同窓会を開きたいと言っていたことは本当のことらしいです。
それは後日、同窓会に参加しなかった山川沙也加と仲が良かったクラスメイトに聞きました。
もしかしたら山川沙也加が懐かしいクラスメイトにどうしても会いたかったのかもしれません。
後に知ったことなのですが、同窓会のお誘いメールは中学のクラスメイト全員に送られてきたらしいです。
山川沙也加と仲が良かった友達や担任の先生は全員その死を知っていたために、質の悪い悪戯と思って参加はもちろん返信もしなかったと聞きました。
結局あのメールの送り主は正体不明です。
ただ私は確かに何度かメールのやりとりをした記憶があります。
しかし、同窓会から数日経った頃にメールを開くと、あの日のお誘いメールもやりとりも含めてメールが全部消えてなくなっていました。
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