目的地
投稿者:りょん太 (1)
この出来事は数年前、私自身が経験したことに基づいて記したものです。
1人行動の多い私の趣味は写真を撮ること。特に、季節の花の写真を撮りに行くことが好きで、この時の季節は梅雨。山の上から景色と紫陽花が見れるある名所に行ってみる事にしました。その日も案の定1人でしたが、特に気にすることもなく出かけていきました。
移動手段は車。古いタイプでナビはなく、ナビアプリを頼りに出発。予定時間は1時間30分。
グネグネとした山道に向かって左右から迫る大きな木のトンネルを横目に休みなくどんどん進む中、到着時間を確認すると、時間も残り20分程。
ですが、ナビに従って近づく度に、道幅があきらかに1台、もしくは車が入れる道なのかわからない幅に変わり、流石になんだか怖くなってきて、ゆっくり走っていました。
そんな中ナビが最後に言った、目的地周辺です。お疲れ様でした。聞き馴染みのある音声が告げた先には、目的地の写真とは似ても似つかない、「墓場」が広がっていました。
音もなく息を呑んだ私は、ナビを消して急いでバックして戻りました。墓場の横には道はまだ続いてるようでしたが、車で走る事はできない、より細く見える道。
もちろん、家を出た頃からずっと目的地の場所は変更していません。何度も念入りに確認し、車で走れる道の設定をして出てきたのです。
その後、混乱しながらもなんとか無事に目的地に着きました。
今思い出しても不思議なのは、目的地に着いた時あの時に見た墓場が近くにはなかったこと、帰りは、往路で迷った道には繋がらずスムーズに帰れてこられた事でした。
今となっては、当時仕事関係で悩みが多く、軽く鬱のような状態であり気分が落ち込んでしまう事も多い日々でしたから、もしかして…なんてことも思ってしまうわけなんですが。
目的地で撮った綺麗な紫陽花を見る度、頭の隅から離れません。
気が弱っているとそういう事があるのかも知れませんね。お健やかにお過ごし下さい。
墓場が。