私を救ってくれた人
投稿者:ぴ (414)
幼い頃から大好きだった父が仕事を辞めてお酒に溺れるようになったのは、私が中学生の思春期まっさかりの頃でした。
家に帰ると父が大声で母に酒もって来いと叫んでいたり、お酒を飲んでぐでんぐでんに酔っぱらって絡まれたり、本当に最悪な思い出しかありません。
あんなにキラキラして見えていた父がああなってしまう姿は見たくなかったです。
私は次第に家にいることが嫌になり、家にあまり帰らなくなりました。
母はとても心配して私に度々連絡をくれるのですが、その度に後ろから酔っぱらった父の声がするのです。
もう私はそれが嫌で嫌で、よっぽどのことがないと家には帰らないと決めていたのです。
そんなときに、いつも寝泊まりしている友達宅に人が来るので、泊まらせられないと言われました。
その子も家に事情がある子だったので、私は仕方なく他の友達の家に泊めてもらうと言いました。
だけどこういうときの友達って薄情で、みんな「うちは無理」というのです。
そう言ったら私が自宅に帰ると思ったのでしょう。
だけど、私はどうしても家に帰るのが嫌で、その日は夕方までお店をブラブラしました。
そしてそこでバイト代をはたいて羽織れる厚手の毛布のようなものを買い、そのまま公園に直行したのです。
一般常識がある今なら、間違いなくそれは危ないと思います。
女子中学生が一人でそんなところで宿泊するなんて正気の沙汰ではないし、どう考えても間違っています。
しかし、その頃の私はどうしても家に帰るのは嫌で、まだ公園のほうがマシだと思えました。
だから私は公園のベンチで寝ようと思ったのです。
その公園はあまり人通りがない場所にあり、予想通り人影はどこにもなかったです。
私は安心してベンチに横になりました。
毛布を被ってもまだ少し肌寒くはあったけど、これならなんとか眠れそうだと安心したのです。
しかし、辺りが暗くなってきて、だんだん公園が不気味になっていきました。
人通りが少ない公園を選んでやってきたので、近くにお店がなく、車の通りも少ないので、シンととても静かなのです。
真っ暗な公園があまりに静かで、次第に少し恐怖を感じました。
たまに風か何かでブランコがキーって鳴ることがありました。
その音が鳴るたびに私はびくっとして、とにかくその雰囲気に恐れを抱き始めていたのです。
そんなときだったでしょうか。
本当にその人はぬっと突然私の前に現れたように見えました。
私が毛布を被ってベンチで横になっていると、気配を消していたかのように急に私の前にその人は現れました。
そして「そこ、どいてくれんか」と私に言ったのです。
驚いて見上げると、それはしわの刻まれた顔の40代~50代くらいに見えるおじさんでした。
まるで枯れ枝みたいに細い腕に栄養が取れていなさそうなガリガリ貧相な体型。
危ない行動でしたが、怖いと言うよりも何だかジーンとしました。
これは短編ドラマにしてもいいくらいジーンとするストーリーです。
ここ最近読んだもののなかで、最高でした。
いい話でした。