虫の知らせ？

　私たち家族が経験した30年も前の不思議な話です。

　弟の幼なじみの男の子がいました。同級生です。親同士も仲が良く、家族ぐるみの付き合いでした。
　弟が成人式を迎えた日も、その子は我が家に来て弟と一緒に初めて結ぶネクタイに、2人で悪戦苦闘していた姿を今でも覚えています。今のようにスマホやパソコンなど、普及していない時代でしたから、就職してからはなかなか会う機会も減ってしまっていました。

　その頃、私の家族は生き物を飼うのが好きで、犬やうざき、当時流行った手乗り文鳥、金魚にカブトムシなどたくさん飼っていました。特に文鳥は、人にも懐き部屋の中で飛ばして可愛がっていました。鳥ですから、夜になるとカゴに戻り夜中は静かに寝ています。

　ある夜、その文鳥が突然バサバサと翼を広げカゴの中で暴れ出しました。キーキーと鳴き声をあげ、いつまで経っても落ち着かないので、平屋で狭かった我が家では、家族が皆、目を覚ますほどでした。夜中の2:30頃のことです。
皆で唖然として見守るしかなかったのですが、しばらくしてようやく落ち着きだしたので、また寝ました。

　朝になり文鳥を見ても特に変わった様子はなく、どうしたんだろうね、と言いながらその日１日を過ごしていたところ、突然、弟の幼なじみが亡くなったという知らせ。

　その子は大の車好きでした。暴走族ではないですが、一人で夜になると山道の急カーブをスピードを出して運転するのが好きだったそうです。そして、あの文鳥が騒いだ日の夜も、一人で山道へ出かけ、スピードを出して車の運転をしていたところ、ハンドル操作を誤り崖から落ちた、とのことでした。朝になり、山仕事の人が崖から落ちている車を見つけ、警察に連絡したそうですが即死だったそうです。

　本当に悲しい出来事で、我が家にとっては大きなショックでした。あとになり、もしかしてその子が最期、会いにきてくれたのかな、虫の知らせだったのかなと家族で話をしました。もちろん文鳥が夜中に騒いだのは、その時一度だけです。本当に不思議な夜でした。