その子供が指を差すと終わる
投稿者:二十左衛門 (3)
そして、子供が現れるにはいくつか共通点がある事に気が付いたのです。
一つは、死期が近い人間であること。
これは亡くなった患者さんの一件から思い到ったのですが、実は初めに子供を見かけた病室の事を思い出してその病室を確認しにいった事があります。
しかし、その病室の患者さんは既に亡くなっていたことを知りました。
もう一つは、これから事故に遭う人間です。
入院中、院内を観察していると片足を骨折している若い男性が目についたんですが、なぜかその男性の側に例の子供が現れて指を差していた事がありました。
気になって遠巻きに男性を観察していたんですが、階段で躓いて転げ落ちてしまったのです。
幸い、命に別状は無いようでしたが、ものすごく痛そうでした。
中には年老いた女性が子供に指を差されていたので、まさか死期が近いのかと警戒していましたが、その女性は後日風邪をこじらせて肺炎で死にかけたそうです。
その女性も幸い生きているので、子供に指差されたからといって必ずしも死に至る訳ではない事が分かりました。
こうして子供について法則性を見つけた僕は、退院後もあの子供を見つけてはどうにかできないものかと思い、何度かチャレンジした事があります。
ある日、同級生のA君の許に例の子供はやってきました。
A君は何処から見ても健康的な男子で、今日も体育のバスケで活躍する程度には元気そうでした。
その帰り、僕はA君が他の友達と帰る後ろを尾行していました。
そんな折、交差点に差し掛かる手前、A君は友達と挨拶を交わして突然走り出したのです。
それも友達の方に向いて手を振りながら走っているので、前方の信号が既に赤に戻っている事に気付いていない様子でした。
「Aくん!」
そんなA君を見て僕は声を張り上げました。
唐突に名前を呼ばれたA君は前に向き直るのを躊躇うようにして後ろを向くと、「おっとっと」と擬音を付けたくなる動きで横断歩道ギリギリで立ち止まります。
その瞬間、大型トラックがA君のランドセルを掠めるようにして通過していき、A君は「うわっ」と声を上げてこけていました。
A君は風圧と走行音に驚いて倒れただけ怪我も無さそうでしたが、僕がA君が無事だということに安堵しているとA君の側に例の子供が再び現れたのです。
そして、僕の方に向き直るとじっと睨みつけるように佇んでいました。
そんな子供の姿を見て、僕はもしかしたらとんでもない事をしてしまったのでは、と困惑しました。
数日後、いつものように起床してリビングに降りると、僕は絶望に呑み込まれそうになりました。
青ざめる僕の顔を見て、母が「どうしたの?体調悪いの?」と額に手をあてがってきたのですが、僕はそんな母の背後に居る子供から目が離せませんでした。
貫頭衣を着た薄い肌の子供の顔を始めて間近で見てしまったのです。
その子供の顔は薬品で溶かしたように爛れており、正直顔のパーツの判断がつきません。
ミニスナックゴールドとかパナップとかの渦巻き模様に似た感じで顔面のパーツや皮膚が溶けていたのです。
ちょうど鼻のあたりなんかは無花果を潰したような具合で、見ているだけで吐き気を催しました。
しかし、僕が口許に手をあてて吐き気を我慢していると、その子供の口のあたりでしょうか、治りかけの瘡蓋を剥がすようにミチミチと音を立てながら口のように開口すると、ニヤリと笑って見せるのです。
めっちゃ怖かったんだけど?
北斗の拳のセリフじゃないが「お前は既に死んでいる(又は死ぬ!)!」みたいだな。
死神の子供版?
ためはち
これは実際見えたら怖いな…
怖いだけじゃなく、語り手の主人公が何とか立ち向かおうとするのがいいね。それで痛い目にもあって、それでも最悪の事態を回避するために必死で抗って…手に汗握る感じで楽しめました。
タイトルから想像する通りの話しでした。
何度も失敗るのはまだ子どもだから?いずれ修行積んで立派な(?)死神になるんでしょうか?その日が永遠に来ないことを願う。