すすり泣く女性

酔っぱらって飲み屋から帰るときに、私はその人を見ました。

バス停の前でずっとしくしくと泣いている女性がいたのです。

20代くらいの女性だったと思います。

私はタイミング悪く、飲み友達とそこを通りかかりました。

すすり泣く女性を見て、私はつい酔っぱらいの悪い癖で絡んでしまいました。

肩に手をかけて「元気出しなよ～」といつもの調子で声をかけたけど、触った時のあまりの冷たさに驚いて、反射的に手を放しました。

「お姉さん冷たいねぇ」と私は言ったのです。

そしたら友達に「もう酔っぱらいすぎ！誰もいないところに声かけないでよ怖いわ！」と腕を引かれたのです。

誰もいないといわれて、私は「はい？」となりました。

だってすぐそこに泣いている女性がいるのに、誰もいないはないだろうと思いました。

いくらそっとしたかったとしても、逆に失礼じゃないかと友達に訴えたのです。

だけど友達は「何言っているの？どこに人がいるのよ？」と言いました。

私が見るとそこにしくしくすすりなく女性がいるのです。

なのに完全無視で、友達の態度の冷たさに驚くしかなかったです。

その日は「涙吹きなよ～」と声をかけて、私はタクシーで家に帰り着きました。

そして家に着くなり、外でピンポーンと呼び鈴が鳴ってインターホンを確認したのです。びっくりしました。

だってそこに帰り道で出会ったすすり泣いていた女性が立っていたからです。

なんでいるの？と思いつつ、お酒で頭が回らない私はとにかく玄関を開けたのです。

するとそこには誰もいません。

さすがに首を捻りました。

おかしいなと思っていると、またピンポーンと呼び鈴が鳴ってインターホンにさきほどの女の人が映っています。

私は急速に酔いが冷めていくのを感じました。

もう一度扉を開けてみたけど、外には誰もいません。

私はスーッと背筋が寒くなるのを感じました。

その日は怖くてしばらく布団の中に潜り込み、そのままメイクも落とさず眠りにつきました。

朝起きてすぐに昨日一緒だった友達に確認したけど、友達にはすすり泣く女性なんて見なかったと言われてしまいました。

今でもあれは誰だったのかと思い出して寒気を感じます。

お酒の飲みすぎで幻覚を見たと友達には言われたけど、きっと違うのです。

私はあの日、拾ってきてしまったんだろうなと思っています。