沼にまつわる怖い話

私の学区内には、神社の中に沼がある場所があります。

雨の日は子供でもわかるくらい沼のかさがあがってあぶないので、雨が激しい日にはその神社に立ち入らないように学校でもきつく言われていました。

でも、小学校3年生くらいのときにある怖い噂が流れたことを覚えています。その噂はこうでした。

「神社の近くで、落とし物をしたから探して欲しいというおじいちゃんがいる。そのおじいちゃんについていくと、神社のなかに連れて行かれ、沼に落とされる」というものでした。

私はちょうど通学路が神社の前を通る道でしたので、友人たちととても怖がり、それが伝わったのかしばらく集団登下校になりました。学校でも「不審者についていかないように」というビラが配られたことを覚えています。怖がっていたものの、もう３年生だった私はどこか面白がっていました。自分がその噂の目撃者になるとは思っていませんでした。

ある雨の日のことです。下校時間になっても誰も集まりません。その日見たいテレビがあった私は、仕方なく１人で帰ることにしました。神社が近づいてくると、白ひげのおじいちゃんが１人で立っていました。

傘で顔を隠しながらびくびくしながら通り過ぎ、ほっと一息つくと、急に手を掴まれたのです。「捜し物をしてくれんか」おじいちゃんはすごい力で神社の方に私をひっぱります。

私は大きな声で叫び、手を振り払って走ると、前を歩いていた高学年の男子にぶつかりました。おじいちゃんが、と言いましたが既におじいちゃんの姿はありませんでした。

ですが、その次の日に学校で沼で老人の自殺者が出たと聞きました。あのまま連れて行かれていたら私も一緒に死んでいたのではないか、と今でも怖い話です。