理科室の焼け子さん
投稿者:ぴ (414)
私が学生のときに通っていた小学校には、いろいろな怪談がありました。
トイレの花子さんとか、音楽室のベートーベンとかメジャーなものもあれば、体育館のおじいさんとか、保健室の久子さんとか本当に数えられないくらいの怪談話がありました。
話を聞く度に友達と一緒になって震えあがっていたのですが、私はその中でも最も怖かった怪談話があります。
それが理科室の焼け子さんなのです。
もうこの名前だけで察する方は多いと思うのですが、その焼け子さんというのは理科室で焼死した生徒の霊なのです。
焼死してしまった理由はいじめによる自殺という噂もあれば、理科室で実験中に火が出てそのせいで全身に大火傷を負って寝たきりになり、その後亡くなったという噂もありました。
実際のところ理由はいろいろとあって正確なものは分からなかったです。
しかし、理科室にはそのような霊が出るという噂がありました。
私がこの霊を怖がった理由は、焼け子さんに出会ってその姿を少しでも目撃してしまったら、7日間の内に焼け子さんが迎えに来て、同じような焼死した姿で焼却炉から見つかるといわれていたからなのです。
その怪談のせいで、掃除で焼却炉に行く度に怖がっていたし、理科室なんて授業でもない限り、近寄りもしませんでした。
私も私の友達もその怪談が一番怖いと思っていたのです。
焼け子さんは理科室に出る幽霊なのです。
だからそこにさえ行かなければ、大丈夫だと思っていました。
一人では理科室に近寄らないようにしたし、理科室に行くような用事を頼まれたとしても、絶対に行かない気でいました。
だけどその日私はあろうことか理科室に一人で入ってしまったのです。
その日私は朝から少し具合が悪くて、保健室に行っていました。
そして、しばらくすやすやと寝ていたのです。
起こされたときにはすっかり体調が良くなっていて、保健室の先生に「もう大丈夫そう?」と聞かれ、頷いてしまいました。
だけど教室に戻ったら、教室に誰もいないのです。
おかしいなと思って慌てて黒板を見たら、次の授業は理科でした。
私は前回理科室で実験をしていたことを思い出しました。
だからおそらくその続きで、みんな理科室にいると思いこんだのです。
教科書一式と筆記用具を持って、慌てて一人で理科室に向かいました。
その日同じ階の別のクラスの人たちもどこかに出払っており、シンとしていました。
そんな中廊下を一人で歩くのは、すごく心細かったです。
しばらく歩いたら理科室が見えてきたのです。
中から人の声がガヤガヤして、「あー良かった。
みんなここにいる」と心から安堵しました。
窓から覗いてもやっぱり人がいるのが分かったし、私は躊躇なく理科室の扉を開けました。
なのに一歩足を踏み入れたら、そこには誰もいなくて、私は驚いて立ちすくんでしまいました。
今でもその焼き子さんとやら出てきているのだろうか…
怖いですね