曰くつきの香木
投稿者:ナナシー (36)
10年以上前の話になります。
私は社会人になってから“お香”を集めるのが趣味となっていました。直接火をつけるお香から、ほのかなふんわりとした香りを楽しむ匂い袋、香りを楽しむための道具が大好きでした。今でこそフローラル系やフルーツ系の香りが楽しめるものを含めると、百種類以上は手元にあると思います。
私は白檀のような香木も好きでした。仕事の休みを利用して京都旅行へ行った時に、たまたまとあるお寺でフリーマーケットが開催されているという事で足を運びました。そこで私の知らない香木が販売されていて、安価であったため興味もあって購入しました。
旅行から帰り、数か月が経って仕事休みにそのお香を焚いてソファに横になって目を閉じ、休みました。その香木は何となく仏壇にあげる線香にも似てスパイシーな香りも混ざって不思議な感じでした。
十分程過ぎた頃でしょうか、木がバチバチ鳴って気になり目を開けると部屋の周囲は真っ白に霧が立ち込めたようになっており驚き起き上がろうとしたら金縛りにあってしまいました。動けないと思っていたら部屋の隅に赤い長襦袢を羽織った長い黒髪の女性が立っていたのです。私は目をつぶって心の中で無我夢中にお経を唱えていました。
何故か意識が遠のいていき数分で気を失ってしまったと思いますが、気が付いた時は既に夜の八時過ぎで、体中汗びっしょりになっていました。しかも窓を開けていたわけでもないのに部屋で焚いていたお香は一切匂いがしていないことに怖く不気味に感じ、その日は仕事場近くのビジネスホテルに移動して一夜を過ごしました。
次の日は仕事休みであった為、怖かったのですが昼過ぎに帰宅すると、片づけてもいないはずの線香を焚いた灰は一切なくなっており、お香立てのみがありやはり匂いもありませんでした。
この怖い体験以来、私は市販のお香のみ使用することにしています。
火災にはくれぐれもお気を付けください