お稲荷さん
投稿者:山彦餅彦 (2)
私が幼い頃の話です。
私は不思議な力がありました。幽霊が見えたり、予知夢を見ることができました。
ある日、学校からの帰り道、どこからか女の子の泣き声が聞こえました。
田んぼの畦道を通り、私はその声の聞こえる方へ向かいました。
草むらを掻き分けて進むと、急に拓けた場所に出ました。
そこにはお稲荷さんが奉られている小さな祠がありました。そこで、5~6才くらいの女の子が1人しゃがみこんで泣いていました。
「大丈夫?」
私は声をかけました。
女の子は
「もうすぐここを引っ越さなきゃいけないから寂しいの」
と答えました。
私はこんな女の子うちの町に居たかな?と疑問に思いつつ
「もし良かったら一緒に遊ぼ?」
と声をかけました。
すると女の子は嬉しそうに頷いたので、一緒にかくれんぼや、あやとり、シロツメクサで花冠作りをして遊びました。
最後に自分が作った花冠を女の子にプレゼントし、辺りも暗くなったので「バイバイ」と言ってお別れをしました。
数週間が経った後、晩ご飯の席で父親がポツリと
「そういえば、うちの町内のお稲荷さん、道の拡張工事で引っ越しするんだってな、今週末手伝いに行ってくるわ」
とポツリと言いました。
私は驚き
「お稲荷さん引っ越しするの?」
とおうむ返しのように父親に尋ねました。
父親は頷き
「一緒に手伝いに来るか?」
と私に尋ねました。
「うん」
何故か無性に興味を惹かれ私は頷いていました。
当日、お稲荷さんの場所に父親と向かいました。
そこには以前と同じようにお稲荷さんの祠がありました。
既に作業が始まっており、数人の大人がお稲荷さんの周りに集まり何かガヤガヤと話をしていました。
「どうしたんだ」
父親は声をかけながら、その集団に近づいていきました。
すると祠の周りに集まっていた人達がぱっと左右に寄ったため、お稲荷様がはっきりと私の目に見えました。
その瞬間、私は鳥肌が立ちました。
祠の中に奉られている、お稲荷さんの像の首にシロツメクサの花冠がかかっていたからです。
私は直感で
「私があの女の子にあげたやつだ」
と分かりました。
因みに、お稲荷さんの像が安置されている祠の扉は、いたずら防止のため常に鍵がかかっており、通常、外部から接触することはできないようになっていました。
そのため、大人達もこの状況を不思議がっていたのです。
驚いて立ちすくんでいる私の背後から
「ありがとう、ばいばい」
と、あの女の子の声がしました。
驚いて振り向きましたが、そこには誰も居ませんでした。
そんな幼い頃の不思議な話です。
君が視たものは祀られている稲荷さまなのでしょう。
怖いというよりは、温もりを感じるお話ですね。
お稲荷様は嬉しかったのでしょうね。
私の実家の近所の小さな祠を移動する際に、離れたくないと言っていましたが、住民がこれからも大切にするとお伝えし現在も住民の安全を見守ってくれています。
ばいばいって、元は英語なんだが。それはそうと、俺のお稲荷さんが近ごろ痒い。
一緒に女の子と遊んであげるというあなたの優しい行動に女の子はうれしかったんですね そして楽しかったのでしょうね