池を求めて歩く者
投稿者:すだれ (27)
ソイツらは池の水を目掛けて歩き回っていたのだと。求めて歩く方角が家の建っている場所と重なり、霊の通る道である霊道に似たものになってしまっているのだと言われた。友人たち兄弟が気を揉んだように、1つ前の住人もその存在に気付き、しかし自力で原因が池の水だと突き止めたのだろう。庭の池はわざと枯らされ、枯葉で覆い隠されていた。
友人一家もそれに倣い、メダカを避難させ池の水は全て抜いた。最後に坊さんが仕上げと言わんばかりに読経し、お祓いは無事済んだ。それ以降、家の外も廊下も何かが歩く様子はなく、次の家に引っ越すまで家族は再びダイニングキッチンで食卓を囲んだ。
「後から知った事があるんだけど、何だと思う?」
「…実は家の中や外を闊歩してたのが一体だけじゃなかった事?」
「えっ」
「坊さんが説明の時『ソイツら』って言ってたようだし。廊下歩きながら外から窓は叩けないだろう」
「う…わ、気付いてなかったヤツだソレ」
「え、な、何かスマン…。で、結局何を知ったんだ」
「ああ…その家ついこの間まで入居者募集してて」
「えっ」
「庭付き平屋一戸建てーなんて書いてて、よく見たら水張った庭池の写真載せてて」
「………」
「家賃が相場の五分の一だった」
「…その値段に至った経緯が容易に想像できるな」
「まあお祓いして池の水抜けば破格物件だし」と友人は笑いながら酌をする。この後の席では比較的明るい話題が続いたが、お開きとなるまで杯に注がれた透明な液体を飲み干せなかった。
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