白いワンピースの女性
投稿者:rei (3)
「私は理科室でみた」「私は2階の鏡に映っているのを見た」「家庭科室の廊下に居た」と
当時、誰もが嘘だろうと頭の隅で理解しながらも、でも本当かもしれないと怖がり
部活の休憩中に皆こぞって目撃情報を話し、帰りはキャーキャー叫びながら玄関に向かう。
今思えば、そのちょっとしたスリルを楽しんでいたんだと思います。
ですが、あの日は違いました。
友人達と会話が盛り上がり、私と4人の友人だけは珍しく肝試しをせずに
皆でまとまって、ぞろぞろと玄関に向かったのです。
友人の中には、一番最初に白いワンピースの女性を目撃したという子も居ました。
選んだのは理科室の前を通る最短コース、途中には2階へ繋がる階段が2ヵ所。
最初に気づいたのは誰だったのか、指をさしたのか
それとも声を出したのか、今では曖昧な記憶の中、
ただ言えるのは、皆の視線は階段の踊り場に釘付けであり
そこには、白いワンピースの髪の長い女性が佇んでいて
電気もついていない暗い踊り場に、その存在が白く浮かびあがるように
ハッキリと見えた事と、ただ静かに私たち見つめていたという事。
人が歩くだけで軋む廊下や階段も静かで、一瞬の静寂がその場を包みました。
そのあとは悲鳴と共に、全員が全速力で玄関に向かって走り
靴を履き替えながら、誰もが早く校舎から出ようと皆が必死でした。
皆が「白いワンピースの女の人が居た」「間違いなく見たと」と
まるで確認するように口にする為、私の見間違いではないと分かり
恐怖で早く家に帰りたいと、怖くて廊下が見れない、早く学校を出たいと
ただそれしか考えられませんでした。
「怖いから、もうその話は止めよう」と誰が言い出したのか
その言葉の後は、静かに玄関から出たことが強く印象に残っています。
あの出来事の後からは、肝試しをして玄関に向かう事もなくなり
休憩中に怪談話しや、白いワンピースの女性の話しをすることもなくなり
目撃情報もパッタリとなくなりました。
ただ、今にして思えば、その階段は、あの大きな鏡が設置されている棟の階段である事。
今までの目撃情報は、あの大きな鏡が設置されている棟にばかり集中していたと気づき
嘘だったとしても、そんな共通点が偶然出来る物かと、ある種の薄気味悪さを
今も感じる思い出の出来事となりました。
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