社長室の監視カメラ

私は関東地方の中小企業に2年ほど勤めています。
部署は総務部兼社長室担当。
田舎ということもあり、企業の体制は昭和そのもの
社長はワンマン、そして残業は多くすることが良しとされているような企業です。
私が最も異常と感じた点は各営業所、部署にカメラを取り付けてあること。
それを社長室のモニターに映し出し逐一監視しているのです。
例えば、掃除が行き届いていないとか、無駄話ばかりしているとか。
社長から直接電話がかかってくるわけです。
そのせいで毎月、退職者が絶えません。
多い時には月に6名の大量退職者が出る始末。

それでも次の就職希望者がいるので会社側も大して気に留めず改善もなされないのです。
そんな会社ですから当然社長や会社に対して恨みを持つ人も多くトラブルが絶えません。
労働基準局が入ったり警察沙汰になることもありました。
その都度社長の人脈とお金でくぐり抜けてきたのです。

私の毎日の仕事は、社長にお茶を出す、スケジュールの管理等。
社長室には毎日足を踏み入れます。
社長の留守中に清掃を行うことも日課です。

先日も一人退職者が出てしまいました。
彼は営業部門で1年目だそうです。
とても頑張っていたようですが、社長からの叱責や上司からの執拗な嫌がらせもあり、うつ病になってしまったそうです。

「うつ病なんてうそだ。あれは怠け病だ」と社長は朝礼で全社員の前で話ました。
「令和の時代に考えられない」社員同士でそんな話にもなりました。
でも毎回退職者が出るたびにそんな様子なのです。
しかも上層部からの嫌がらせを怖がって誰も意見しません。
以前社長に進言し嫌がらせさせられたり、ほかの部署に飛ばされたりした人がいたからです。
本当に懲りない会社です。

つい先日社長室を掃除していてふいにモニターを見たんです。
モニターには全ての各営業所と部署が画面分割されて移っています。
そんな中、営業部を映し出している場所に黒いシミのような靄のようなものが映し出されています。
入口から一番奥の部長の席の脇にもやもやと映し出されています。
私は目の疲れのせいだと思い、気にも留めませんでした。