母が見た火の玉
投稿者:テル (2)
短編
2022/09/13
07:32
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まだ実家に住んでいたころの話です。
夏の蒸し暑い夜、母が
「冷蔵庫に飲み物がなくなっちゃって。近くの自動販売機まで一緒に行かない?」
と誘ってきました。
2人で200mくらい先の商店前にある自動販売機に向かって歩いていると、
母が急に「ひゃー!」と言って道路にしゃがみこんでしまいました。
私は何が起こったのか全く分からず
「どうしたの?体調が悪いの?」と母に尋ねました。すると母は
「え?見えなかったの?火の玉、あんなにはっきり横を…」
とぶるぶる震えながら答えました。
「今、今だよ。丸い青い炎みたいなのにオレンジの長い尾っぽ見たいのが伸びてて…」
と話をつづけましたが、腰が抜けてしまったのかなかなか立ち上がる事が出来ませんでした。
しばらく道路にしゃがみこんでいた母でしたが、肩を貸してどうにか家まで引き返す事が出来ました。
家に帰って私にはまったく見えなかった話を母にすると、
「近所の人がつい最近亡くなったって、回覧板が回ってきてたから…もしかしたらその人のかも。
そんなに深い付き合いがあった人じゃないけど、今日あたりお葬式だったと思うから…」
と答えました。
私にはまったく見えませんでしたが、母の話はとてもリアルで火の玉の様子もとても具体的だったので
母は本当に火の玉を見たんだと思います。
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