行方不明になった友人の話

そして、Ａを思い出す度に思う事があるのだ。
俺宛に送られてきた動画。
あれを撮影した位置は恐らく押し入れの上にある天袋。
つまり、あの動画は天袋に潜むミイラの様な頭部がＡを見ていた映像ではないかと、俺は思っている。

あの時、天袋の中に居た頭部と細長い手足をした首の無い「何か」。
俺の中ではアレがＡの失踪に関係しているのは間違いないと踏んでいるが、こんな荒唐無稽な話をＡの父親や警察に証言する訳にはいかないし、話しても頭がおかしいと思われるか、逆に犯人として疑われる確率の方が高いだろう。

それにあの時はＢもソレを目撃していた筈だが、ソレについては証言していないようだった。
あれ以来、平屋での体験をＢと語る事は何故か無かったが、詰まる所、Ｂも自分がおかしくなったと思われない様に黙っているのだろう。

ただ、１年以上も前の事なのに今でも俺が執拗に怯えているのは、俺に動画を送り付けた奴が再び俺に変な動画を送り付けてこないかと危惧しているからだ。
俺がＡの事を完全に忘れた時、突然、ラインの通知が鳴り、動画が送られてくるのではないかと息を呑んでいる。

そんな日が来るのかは分からないが、俺は居なくなったＡの心配をしつつも、自分の身の心配もし続ける日々を過ごしている。