都内の庭園に今も生き続ける怨霊
投稿者:テス子 (1)
わたしは都心の庭園に勤めている。
この仕事場になっている歴史的な庭園は、昔大名庭園として江戸時代末期までそこにあり、明治に入るとこの広大な敷地は財閥が買い占め、その財閥の家族の邸宅として使用されていたとのことだ。
第二次世界大戦後はGHQに支配されていたらしいが、平成に入り東京都がほぼ空き家になったこのボロボロな洋館付き庭園を管理するすることになったという経緯があった。
わたしはここに勤めてはや2年、最近はコロナ禍で、仕事はほぼリモートになってしまったけれど、週に一度だけ、わたしはこの屋敷に足を運び、空気の入れ替えやら簡単な掃除をしなくてはならなかった。
財閥の家主はイギリス人の建築家に作らせた見事な洋館と、洋館と繋がっていた和館で家族と召使いたちと生活していた場所だそうだ。
わたしは半日かけて館の窓を開けて空気の入れ替えをし、埃を払っていく。
隣の和館の雨戸をガラガラと一人で開け閉めすると、あっという間に時間は過ぎていった。
この館に一人でこうして掃除をしていると、物陰から誰かが見ているような何か視線を感じるのだけれど、振り返るとやはり誰もいない。
まあ、いつもこういう感覚に悩まされているから、なんだか最近は慣れてきてはいるけれど、やっぱり変な感覚に襲われる。
あの日はいつものように掃除を終わらせて、家に帰ろうと廊下を歩いていると、ヒヤリとした感覚が頭から首筋を誰かに舐められるような感覚に襲われるのであった。
それは何か快感でもありまた、ひどく眠気を誘うような不思議な感覚だった。
仕事を終えて、わたしは和館から玄関がある洋館へ向かうとき、ちょうどその間にある当時召使い専用の暗い階段の向こうからシクシクと誰かが泣いているような声が聞こえる。
わたしはその声に反応して振り向くことを躊躇い、このまま玄関まで靴を抱えて急足で廊下を歩いた。
すると背後から「お願いです。 わたしをここから出してください」声が聞こえたような気がした。
誰かがこの暗闇の向こうからわたしへ声をかけてきた。
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