赤いスポーツカーと女性

これは私が小学一年生の時のことです。

私の通っていた小学校は、細い道ですが、車の通れる道路をはさんで運動場があるちょっと変わった作りをしていました。

なので、学校に子供が居る時間は車での通行が禁止され、道路には大きな黄色と黒の縞模様の看板が立てられていました。

昼休み、友人とその道路を通って運動場へ向かっていた時でした。

私の教室は一番運動場に近く、食べるのが早かった私と友人はまだ誰も出てきていない運動場に駆け込みました。

その時、ふと私は道路の方が気になりました。

そこに見慣れないものがあったからです。

真っ赤なオープンスタイルのスポーツカーが、立ち入り禁止の立札の前スレスレの場所に停まっていたのです。

民家が近くにあるわけでも、お店があるわけでもない場所です。

いったいあの車は何をしているのだろう。

私は気になり、先に遊具に辿りついていた友人を呼びました。

近くで見てみたいと思ったのです。

顔をスポーツカーの方へ向けると、さっきまでは誰も乗っていなかった車の中に女性が乗っているのが見えました。

彼女は車の色と似た赤い服を着て、髪は濡れているような重い黒色をし、軽くウェーブがかかっていました。長く伸ばされたその髪は彼女の顔を分かり辛くしていました。

私は友人がやってくる前に車の方へと歩いて行っていたのですが、友人が私の手を掴んで止めました。

どうしたのかと顔をみると、友人も不思議な顔で私をみていました。

「あの車を見に行こう」

そう言った私に、友人は何を言っているのかと訝しがり、用もないのに立札の方へ行ってはいけないと言いました。

立札の側から見たらいいと言って、また車の方を見た私は驚きました。

そこには立札があるだけで、車など停まっていなかったのです。

友人に自分が見たものを説明すると、友人は自分が通った時も、私の方へ向かってきた時も、立札のそばには何もなかったと言います。