のるな
投稿者:狐の嫁入り (6)
「もうこんな時間か、明日も仕事だし今日はこれで帰るわ」
その日、新居祝いにと友人の住むマンションを訪れたのだが、久々の再開というのもありついつい長居してしまった。
「ああ、今日は来てくれてありがとうな、また遊びに来いよ」
「おう、しかし本当にこのマンション良いな、これで家賃安いとか最高じゃん、俺もここに引越、」
「やめとけ……」
「え?」
「あ……いや、何でもない……気をつけて帰れよ……」
「あ、ああ」
俺はそう言うと玄関に向かった。
「あ、言い忘れてたけどエレベーターはこの時間使うなよ」
突然玄関でそんな事を言い出す友人に俺は首を捻って見せた。
「最近夜になるとエレベーターの調子が悪いみたいでさ、マンションの管理会社が余り使わないでくれって、明日あたり業者が点検に来るんだと、それにお前ちょっと太ったんじゃないのか?階段使え階段」
「おいおいひでえな、まあいいや、分かったよ」
俺はそう言うと手を振り友人の家を後にした。
エントランスの通路に出ると、階段の方へと向かった。
だが。
「しまった……行き止まりかよ」
どうやら階段は反対側の方のようだ。
軽く溜息をつきながら、仕方なく来た道を引き返す。
しかし途中まで進んだところで俺は足を止めてしまった。
面倒くさいな……。
ふと、近くのエレベーターが目に留まった。
「一応使えるんだし……いいよな……」
苦笑いしつつ俺はボタンを押した。
流石に最上階から下まで降りるのは骨が折れる。
開き直った俺は、やがて登ってきたエレベーターに乗り込むと中で1Fのボタンを押した。
ゆっくりとドアが閉まり、エレベーターが動き出す。
13F、12F、11F、とスムーズに降りて行った。
「別に壊れてねえじゃん……」
あいつ意地悪で階段使えとか言ったんだな、そう思った時だ。
わざわざ嘘ついて怖い思いをさせた友人はひどいと思いました(こなみ)
久々に鳥肌立った…