地下道の話
投稿者:ごんすけ (2)
短編
2021/02/03
23:10
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私の育った地区は1桁の国道と高速ICを繋ぐ交通量の多い道路が走っていたため、通学路には地下道が多かった。
殆どの地下道は入ってから出るまで一直線だが、ごく一部の地下道は「コ」の字形になっており、奥が見えないことから事故防止として「何かが入ってきたことを伝える」ためにセンサーで音楽が流れる仕組みとなっていた。
小学生中学生なんて、怖い噂話は大好きで「誰も居ないのに音楽がなった」「音楽がなったのに誰も入ってこない」という話は上の世代も下の世代も知っている、そんな地下道だった。
ここまでが前置きである。
5年程前、偶然仲の良かった友人達と帰省のタイミングが合い、市役所に勤めていた1人を含め4人で呑むことになった。
鶏肉の輸入の話、老朽化による歩道橋化の話、昔拾ったエロ本、あの時流行ったゲームのリメイク、昔話に花を咲かせ、今の仕事の話に盛り上がっていたが、日付が変わる頃、誰かが「小学校行こうぜ」と言い出した。
店を出てしばらく歩き大通りに出ると、歩道橋が見えてきた。
灯りの消えた地下道の入口の向こう側に、街灯に照らされた歩道橋の上り階段があり、我々はゆっくりとその階段を登り始めた。
地下道からは懐かしい音楽が聞こえてくる。
「この音だよな」「そうそう」「なっつかしいわー」
ノスタルジックな気持ちに浸り、笑い合う我々をよそに、市役所勤めの友人は気まずそうな顔をした。
「この地下道、電源死んでんだぞ?お前ら何が聞こえたの?」
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