井戸端会議
投稿者:コオリノ (3)
等と考えながら入口を出たところで、俺はギョッとして思わず固まってしまった。
いつもの買い物袋を肩から下げたママさん連中、その顔は、とても嬉しそうにニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべていたのだ。
そして俺に気が付くと、三人はとても人の生き死にの話をしていたとは思えないほどスッキリした笑顔を、俺に向けてきた。
「お、おはようございます……」
何とか平静を装い挨拶をする。
「あら、おはようございます」
合わせた挨拶、取り繕った様な笑顔。
それがいつもの何倍も気持ち悪く感じた。
足早に踵を返しその場を立ち去る。
今朝のせいで、その日は一日中憂鬱な日だった。
仕事を終え家に帰り、今朝あった事を嫁に話すと、やはり四棟で自殺があった話はどうやら事実のようだった。
明日もまた何か聞かされるのか……そう思うだけで嫌気がさしてくる。
次の日、陰鬱な気持ちでエントランスを抜けた時だった。
「六棟の沼川さん、ランニング中に轢き逃げにあったんだって!」
「マンションの周辺走ってたんでしょ?」
「犯人まだ見つかってないらしいわよ」
まただ。
俺はできる限り三人に気付かないように顔を背け入口を出た。
「おはようございます」
だが意に反する様に、背後から三人が挨拶を投げかけてきた。
仕方なく諦めて振り返ると、相変わらずのあの気持ち悪い笑顔で、三人が俺を見つめてくる。
思わず引き攣るような笑みで俺は頭だけ下げ、急いでその場を後にした。
仕事を終え家路に着くと、俺は今朝の事をまたもや確認する様に嫁に話した。
「ああ、聞いた聞いた。お隣さんも言ってたわ」
どうやらまたもや本当の話のようだ。
「そ、そっか……」
そう俺が短く返事を返した時だった。
「今日の昼頃だったみたいよ……私ちょうどその頃買い物に出掛けてたけど、なんか他人事に思えないわよね」
「えっ?」
嫁の言葉に、俺は思わず聞き返した。
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