雪山で見た夢

これは知人のＮさんから聞いた話です。

Ｎさんはある山登り愛好家団体の顧問的存在でした。ある時、冬山登山をしていたチームから「行方不明者捜索のため、応援に来てほしい」という連絡を受け、急遽現場に駆けつけたそうです。

状況を聞くと、チームで登山中、猛吹雪に巻き込まれてしまい、急ぎ避難したが、途中で一人行方不明となってしまった。吹雪が止んで、地元の消防団と共に捜索に出たが、丸一日経った今も見つからなかったため、登山経験豊かなＮさんを呼んだということだった。Ｎさんも現場に入り、雪を掻き分け必死に探したが、結局その日は見つからなかった。

その夜、山小屋で眠りについたＮさんは不思議な夢を見た。真っ白い世界…人だかりができている…彼らの顔はよく判らないが何かを探しているように見える…そして、人だかりから離れた右の方に何かがあることに気付いた…それは真っ赤な血溜まりだった…。

翌朝、Ｎさんが夢のことを捜索隊に話すと、前日に捜索したポイントから右の下に当てはまる場所として「崖」があることが分かった。果たして、その崖下で雪の中から遺体が発見され、その姿は真っ赤な血に染まっていた…。おそらく猛吹雪で視界を失い、滑落したのだろう。雪に埋もれていきながら「見つけてほしい」と願った彼の思いがＮさんに届いたのかもしれない。