お手製の手軽な呪い
投稿者:懐炉 (9)
長編
2022/03/05
09:39
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田岡は電話に出ません。アイツの番号は既に使われてません。直接実家を訪ねて聞いた所、上司が死んだ数日後から消息不明だそうです。田岡の母親は憂鬱そうにため息を吐きました。
「毎晩夢に怪物が出てくるって言ってました。中心に男の顔がある怪物です」
そんなもの私は描いていません。なのに怪物は進化しました。怪物が吸収した男が誰か、すぐに理解しました。現在私は家にひきこもって怯えています。寝るのが怖くて寝ていませんが起き続けるのも限界があります。うとうとまどろんでいる時に気配を感じて振り返ると、あの怪物が近付いています。怪物には顔がありました。見知らぬ男と田岡の顔がぶよぶよした肉のかたまりに埋め込まれています。
私は一体何を生み出してしまったのでしょうか?田岡お手製の滅茶苦茶な魔法陣と絵が融合して、本当に呪いがかかってしまったのでしょうか?
怪物はすぐそこにいます。男たちの顔が嗤っています。私はもうだめです、だめなのです、だれかたすけてください。
パソコンを点けて遺書を書きました。怪物から逃げきるには他に手立てがありません。ベランダの外には青空が広がっていました。死ぬには最高の日です。
さようなら。
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