予感
投稿者:和音 (2)
眠れないのでもうひとつ。
あれは数年前の夏の出来事です。
サービス業をしている私は、いつものように深夜1時過ぎに帰宅していました。
昼とは違って涼しい夜道。
イヤホンで好きな音楽を聴きながら、15分ほどの帰路をのんびりと歩いておりました。
大通りを10分ほど歩いた後は、小道へ入って真っ直ぐ歩いて5分弱で到着です。
それも半分を過ぎた頃、遠く正面から車のライトが近づいてきました。
真夜中とは言え、住みたい街ランキングに何度か入った程度の街ではあります。
たいして気にもせずに、そっと端に避けたんですね。
グレーのワンボックスでした。
車は私の横に差し掛かるとスッと止まり、開け放たれた窓越しに運転手が駅までの道を尋ねてきます。
チラッと見たナンバーもこの辺りのもの、知らない筈も無いし、万が一知らなくても携帯やカーナビで検索出来る。
咄嗟に怪しいと感じた私は、ギリギリまで端に寄り、簡単に駅までの道のりを教えて歩き出しました。
運転手はどうもーと言って、そのまま直進して行きました。
良かった。
胸を撫で下ろし再び歩き始めた直後、車がUターンしてくるのでは無いか?という予感が頭をよぎりました。
居ても立っても居られず、私は後ろを振り返り振り返り、気がつけば早歩きであと少し先に見える家へ急いでいました。
大通りへぶつかった車は私の案内通りに曲がり、車体の後方が消えて行きました。
良かった。行った。
と思った矢先、車はバックして戻ってきたのです。
ハイビームで照らされる私。
来た!思わずそう叫びながら全力で走り出しましたが、家まではあと200メートルほど。
走りながらポケットの鍵を取り出し、なんとか家までたどり着き、外階段を駆け上っている途中。
家の鍵だけがキーリングから外れて下へ落ちました。
何でこんな時に!玄関の前に居るのに中に入ることが出来ない私は、怖くて震えていました。
わずか数秒後、車のエンジン音は家の真横へ来て止まり、スライドドアの開く音、そして人のパタパタと走り回る音・・
私を探しているんだ。
そう確信した私は声を押し殺して泣いていました。
幸いにも私は見つからず、しばらく足音が聞こえた後に、再びスライドドアの閉まる音、発車するエンジン音、遠ざかっていく音から立ち去った事を理解しましたが・・
仲間が居るかも知れないという恐怖から、ひとりでは鍵を拾いに行く事が出来ませんでした。
全く同じような経験をしたことがあります。なんとなく変だなと思っていたら、案の定通りすぎたはずの車が戻ってきたので予感が確信に変わりました。目の前で走り出したら追いかけられるなと思い、角を曲がってからダッシュしてなんとか逃げました。お互い無事で良かったですね…
嫌な予感ほど当たってしまう物ですよね。
違和感を見逃さなくて良かったです。