根の長い長い木
投稿者:三本松 (2)
実家の近くに、不思議な木がありました。
家や古いアパート、小道と坂と階段だらけ、車の通れる道の少ない町。
そんな町の真ん中あたりに、古いけれども硬い丈夫な鉄の柵に囲まれた岩場があり、木はその岩場に長い長い根をくねくねとからめていました。
子どもの頃から、私はその木が、その場所が、異様で恐ろしくも神秘的で、気になっていました。
けれどもなぜ鉄の柵でその場所が囲まれているのか、家族も、その町の古い大地主である親族達も知らず、木、もしくはその岩場が鉄の柵に守られているかのようにそこにある理由は、解明の仕様もありませんでした。
それから大人になった私は県外へ嫁ぎましたが、4年前に帰省した時、ふと思い出してその場所へ行ってみました。
相変わらずの異様な様子に圧倒されつつも、ふと気がついたことがありました。
その長い根の木のある岩場には落ち葉やゴミがあったことがなく、いつもさっぱりとしていてきれいなこと。町にたくさんいる猫がその場所にだけは入らないこと。出入り口がないこと。
やっぱりなんだか変だよなぁ、とモヤモヤと考えていると後ろに人の気配がしました。
振り返ると近所に住む顔見知りのおばさんが全くの無表情で立っていました。
いつも明るく声をかけてくださる方なので、困惑しながらも「こんにちは、お久しぶりです」と挨拶をしました。
ですが、おばさんは無表情で無言のまま。
気まずいので「では、どうも。失礼します」と立ち去ろうとしたその時、おばさんが無表情のまま言いました。
「だめよ、触ったら。うちは猫が」と。
「猫が?」
「…うちは猫がね。猫ならまだ、って言われたけどね。ひどかった。だめよ、見ているだけでも、どうだかわからんよ」
おばさんはそれだけ言うと、くるりと背を向けて去って行ってしまいました。
それ以来、そのおばさんを見かけたことはありません。
根の長い長い木のこと、岩場のこと、今も、何もわかりません。
この木には霊的な何かがあるのでしょうね。
精霊が宿っているとか?その木を見てみたいわ。
魔は魅入ってしまうよね。
こわいからおばさんは無表情やめい
松なんだろか?
説明不足だろ!
尾道の良神社の御神木のことでは?