足を引っ張られるトラウマ

私は小学生時代、水泳が大の得意でクラスでも先陣を切って泳ぐような子供でした。自分の泳ぎにも自信があったし、将来は水泳選手になりたいと夢見たこともありました。そんな夢もあのことがあってから、急に萎んでなくなってしまいました。私にとってトラウマと言っていい傷かもしれないです。

私はその日も学校の授業で元気にプールで泳いでいたんです。授業中にアップで悠々と泳ぎ、そしてクロールで友達と競争したりしていました。そんなときに、私は足をくいっと引っ張られるような感触がしたんですね。最初は友達がちょっかいかけているのかと思って、「やめてよ」というように抵抗しました。そしたらすっと手の感触がなくなったんです。

水から上がって、「誰さっき私の足を引っ張った人？」て聞いたけど、誰も返事をしませんでした。おかしいなと思いながらも、コース別に分かれて、順番に泳ぐターンにわくわくしてそっちに集中したのです。自由でいいというので、私は一番得意な背泳ぎで仰向けで泳ぎだしました。そしたらまたさっきみたいな足首を握りこまれる感触が。私は「え！？」と思いましたね。なぜなら同じコースには今、私しかいないはずだから。そしたら急に背泳ぎしている私の下半身が水中に引っ張り込まれ、一瞬凍り付きました。

私は鼻から入ってくる水にガボッとなって、慌ててバタつきました。でも足首はそれに構わず引っ張り込まれて、ぐいぐい水の中に引き込もうとします。強い恐怖と命の危険を感じました。そんな私の異変気づいた担任が慌てて飛び込んで助けてくれたんですけど、息も絶え絶えで「足を引っ張られた」とわんわん泣く私を先生が保健室に連れていきました。

ただ私が思ったように、そのときの私のコースで泳いでいたのは私だけで、別の生徒が近づいたのを見た目撃者がいないのです。周りから見たら私が突然溺れ始めて助けられた様子しか伺えなかったようで、誰も犯人が名乗り出てきませんでした。いえ、犯人がいないのです。

あの日足を引っ張られた感触は今も脳裏にこびり付いて離れません。それがトラウマで、急にうまく泳ぐことができなくなって、今もプールどころか海や川で泳ぐことも苦手になりました。あの日私の足を引っ張って命を脅かしたのは誰なのか。近くには誰もいなかったはずなのに、私の足首にはくっきりと青あざができていて、それを見てさらにぞくっとしたことを忘れられません。