海からの戦没者の手
投稿者:りょう (2)
これはNPOボランティアとして沖縄の戦没者慰霊に訪れた話。
私の父親はいろんな神社や仏閣をよく訪れており、家族の中では霊感が一番強く、夜中によく日本人形みたいな女の子が枕元に座ってる。というような話をよくしていた。
そんな父親が慰霊に参加するわけだから、不思議なことがおきないはずがない。
そんな父親が沖縄のとある崖を訪れた時のことである。
慰霊ボランティアのためお坊さんたちの読経が終わり、最後にお経が書かれた御札を崖から海に投げ入れると不思議なことが起こった。
当日、その崖は風が強く吹いていた。当然御札が風に舞ってあちこちに分散して落ちていくだろうと誰もが思っていた。
しかし、そうはならなかった。
投げ入れた御札が海に向かって垂直に1枚1枚落ちていったのである。
普通はまずそんなことは起こらない。
まるで竜巻や渦巻きの中心に向かって吸い込まれる御札。
それはまるで海の中から必死に空中に手を伸ばして、御札を掴みとろうともがき苦しむ人たちの叫びのように思えた。
沖縄は今もなお海の底には戦死した人たちの遺体が多く眠っている。
彼らは生きているのか死んでいるのかもわからないまま、今も沖縄の海を漂っている。
すべての戦死者に御札を届けるにはどれくらいの枚数が必要なのか?
また御札を運よく手にできた者の魂は救われたのか?
毎年8月。終戦記念日が近付くと私は沖縄でのこの不思議な体験を思い出す。
早く地獄から解放されたいのでしょうね、この話を読んで蜘蛛の糸の話を思い出しました。