半グレとヤクザ

その夜我が家に来たKはSの近況を教えてくれました。
結果的に彼は自首したそうです。
共に逃げた仲間も一人は音信不通になり、もう一人の行方も分からなくなり、組からの追い込みもかなりのモノだったらしく警察に頼った様です。

トータルするとかなりの額の被害があった様ですし、ヤクザ絡みの事件ですから警察も捜査をしていた様で摘発するには実際に彼の証言は有用であった様です。

弁護士からも反省を見せる為にはそこで儲けたお金も返した方が良いと言われた様で、私に預けていた400万も素直に渡す事にしたそうです。

個人的には持っといても良いんじゃないの？とは思いましたけど、本人のお金ですからね。

彼はその後懲役へ行きました。

Sが自首に至った経緯としては、共に逃げたうちの一人は彼女にどうしても会いたくて連絡をとってしまい、会いに行った先で待ち伏せをされて拉致された事。彼女は脅されていたかお金を貰っていた様です。

その話を教えてくれたのがSが一番仲の良かった先輩M。

Mとは共に逃げた後もお互い近くに潜伏しマメに連絡を取っていた様ですが、ある日電話をかけるとMとは全く違った人間が電話に出て『おいっ。お前◯◯か？それとも◯◯か？』とヤカラ口調で言われたそうです。
Mさんも捕まってしまったのか。。
と恐怖と絶望で急いで電話を切ったそうです。

その後Mさん潜伏先のマンションを訪ねた所、やはりチャイムを押しても返事も無く、ドアノブを回すと鍵は掛かってなかったそうです。
恐る恐る開けてみると中からはテレビの音がしたそうです。
玄関に靴も乱雑に脱ぎ捨ててあった様ですが、感覚的にこの家にはもう居ないんだと悟って、その部屋を後にしたそうです。

自分もいつか。。。その想いが日に日に強くなり自首を決意した様です。

Sが出所したという話を聞いてからしばらくして、Kに連れて行かれた田舎の一軒家で彼と久しぶりに再会しました。

古い一軒家のちゃぶ台と棚とテレビしかない和室で、坊主頭で昔の悪そうな顔から憑き物が落ちた様な、痩せて修行僧の様な顔をしたSから色々迷惑をかけてゴメンと謝罪を受けました。

俺は何の迷惑も掛けられてないし、謝る必要は無いよと返事をしました。

KともSとも今は疎遠になってしまいました。
彼等がどうしているかは分かりません。

何だか三流のVシネマみたいな話ですが、本当にあった出来事なんです。

Sと共にお金を持ち逃げし連絡が取れなくなった二人のその後の行方は分からないそうです。

他にも逃げた仲間が居た様ですが、連絡を元から取っていないのでどうしているのかは知らないとの事でした。

この一連の事件を通して私が思った事は、やはり人間は地に足を着けてしっかりと誠実に生きていかなければ、という事です。

Sは何年もかけて稼いだ金のほとんどを失い、逃げる様な生活を強いられる事となりました。

お金もあり自身が何者かになれた様な錯覚に一時的に酔っていただけで、その実は虚栄心にまみれ欲に溺れ選択を誤った愚かな青年だったという事です。

彼の今が幸大きものである事を願います。