最後のアラーム
投稿者:めばちこ (5)
これは私の子どものころの話なのですが、おばあちゃんの古くからの友人のおじさんが私の小学校入学祝いに可愛い目覚まし時計をくれました。
「毎朝これを使って寝坊せず元気に登校してね」とプレゼントしてくれたのを今も鮮明に覚えています。
夏には花火大会、秋には芋掘りと色々なところに連れて行ってくれました。
よくおばあちゃんの家に顔を出していたそのおじさんですが、ある日を境に訪ねてこなくなりました。
おばあちゃんに聞くと、今はお仕事が忙しいから遊びに来れないんだよというので、早くお仕事終わればいいのにと思っていました。
しかし、1ヶ月、2ヶ月経ってもおじさんには会えませんでした。
そんなある日、おじさんからプレゼントしてもらった目覚まし時計が突然鳴り響きました。
毎朝7時にセットしている目覚まし時計が鳴ったのは、夜の9時頃だったと思います。
アラームの掛け間違いかと思い時計を確認しましたが、針は間違いなく7を指していました。
不思議なことはもう1つあり、何故かそのアラームを止めた後からどれだけ時間を設定してもアラームが鳴らなくなったのです。
その数日後におばあちゃんの家へ行く機会があったので目覚まし時計を持っていきました。
事情を説明し壊れてしまったのかもしれないというと、たとえ使えなくなってもその時計は大事にしなさいとおばあちゃんが言いました。
数年後に知ったのですが、実はおじさんはずっと行方不明で捜索願が出ていました。森の中で、自殺しているのが発見されたそうです。
あのアラームが突然鳴った時間、おばあちゃんの家におじさんが遺体で発見されたという連絡があったそうです。
とても優しいおじさんだったから、もしかして私にも何かを伝えようとしてくれたのかなと今になって思います。
おじさんがプレゼントしてくれた目覚まし時計は、今も大事に飾っています。
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