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不思議体験

ACOさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

天国からの電話
短編 2021/11/11 08:36 983view

 ある日の日曜日、私の携帯電話に家の電話からの着信履歴が残っていました。届いた時間を見るとお昼の12時過ぎです。現在、家には夫1人しか住んでいません。おじいちゃんは1か月前に亡くなり、おばあちゃんは老人ホームに入所しています。私は単身赴任で遠くに住んでいます。おじいちゃんは、病気で急に亡くなりました。誰に迷惑をかけることもなく天国へ旅立ちました。

 「私に電話くれた?」と夫に電話をして聞いてみましたが、夫は、電話などかけていないと言います。その日は、家の裏の畑で野菜の苗を植えていたそうです。家の鍵を閉めて畑に出かけていたということでした。誰かほかの人が家に入ることはできません。

 では、いったい誰が私に電話をくれたのでしょう。考えても思いつきません。「本当に私に電話をくれていないの?」と確認しても、電話はしていないと言います。もし、電話をかけるなら、家の電話でなく自分のスマホからかけるはず、ということでした。確かにそうです。スマホはいつも身近に置いていますが、家の電話は玄関に行かなければかけることはできないからです。では、いったい誰が私に電話をかけてきたのでしょうか。

 私が家に帰った時には、お仏壇には、ご飯やお汁とおかず3品、それにお花やお水を供えるのですが、夫1人ではそういうわけにはいかず、造花の花とお水だけということでした。

 よくよく夫と話をしていたら、「そういえば…。」と、夫が何かを思い出したように話し始めました。私に家の電話からの着信が残っていたあの日曜日の午前中に、仏壇屋さんからおじいちゃんの位牌が出来上がって届いたのだそうです。それで、仏壇に供えたのだそうで。

 ということは、もしかしたらおじいちゃんが、「父さんは何もしてくれなくてお腹が空いて仕方がないから、お母さん、何か食べさせてくれないだろうか。」と私に伝えたかったのかもしれません。そう思い、家に帰った時には、ご飯を作りお供えをするようにしました。おじいちゃんお好きなお酒も、甘いお菓子も仏前に置きました。「おじいちゃん、どうぞたくさん食べてくださいね。」と祈りながら。

 夫にもこのことを話し、おじいちゃんの好きなものをできるだけ仏前にお供えするようにお願いしました。それ以降、私のところに家からの電話はないし、着信履歴も残っていません。夫は用があれば自分のスマホから電話をかけてきます。

 きっと、あの日の電話はおじいちゃんが天国からかけてきたのだと思います。

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