お手伝いのおじさん

私の家は商売屋でして、よくお手伝いに来ていたおじさんの事をお話ししたいと思います。

今から35年以上前の事です。
記憶が前後したり曖昧な部分もありますがご了承下さい。

おじさんは背も高く体格もよく、髭面の強面で子供の私にはまるで熊の様に見えました。
(以後KMとします。)

お小遣いをもらったりパチンコの景品だとお菓子を貰ったりした事もありますが、私はKMの荒っぽいというかガサツな感じが好きではありませんでした。

仕事の後に家に寄って夕飯を一緒に食べていく事もありましたが、大きな声を出し酒をガブガブ飲んでなかなか帰らない所も嫌だった。

そんなある日の夕飯時に祖父が

『昨日からKMの嫁さんが帰って来ねーんだとよ』
と話した事を覚えています。
何処で何してんだか、あのバカは！等と散々文句を言っていたそうです。

結局３日しても帰って来ない為KMは仕事を休んで警察へ捜索願いを出しに行ったそうです。
その後地元の小さな新聞にも行方不明者として奥さんの写真が掲載されて、KMも友達や近所の人にも頼んで一緒に奥さんを探していました。

しかしそれから間も無くしてKMも失踪し、警察が我が家にも聞き込みに来ました。

私は人が二人も消えてしまった事に凄く恐怖心を感じました。
得体の知れぬ何かが私もさらいに来るのでは？と夜が怖かった。

結果的にこの事件はKMが逮捕されて幕を閉じます。
家庭のお金をギャンブルや酒に注ぎ込み過ぎている事を奥さんに注意され、逆上して殺害後に湖に遺棄したそうです。
自身は嫁さんがいなくなり困っている夫を演じて来たが、警察にも怪しまれだして逃走をしたのが事の顛末。
後日他県のパチンコ屋でお縄となったそうで、この事件はテレビでも報道されました。

殺人犯が数日とはいえ我が家に働きに来ていて、私も顔をあわせていた事を思うと今でも恐ろしいなと感じます。

嫁さんが失踪した翌日以降事やけに多く喋るなと祖父や父は思っていたそうですが、心配やイライラから来るものではなく、事件を隠そうという思いから多弁になっていたんですかね。

人間って怖いなと思ったお話しでした。