私が小学生のころに流行った妙なおまじないがある。
クラスのだれがはじめたのか定かではないが、それは自分の名前を書いて、その文字全体をやまいだれで囲むというシンプルなものだった。
これは学校を休みたい子どもたちのメシア的なもので、試した子たちは微熱を出したり下痢を起こしたりして見事成功した。
ただし、これは自分の名前を使うのであれば自業自得にすぎないが、中には友だちの名前を使うという陰湿な流行もあった。
大概がグループで自分だけハブにされたとか、好きな人が被ったとかいう理由だったのだろう。
効果はてきめんで、名前を書かれた子は胃腸炎やインフルエンザで数日休むことになる。しかし、おまじないをかけた子も仲良く同様の症状に苦しんだようなので人を呪わば穴二つとはよく言ったものだ。
ある日、おまじないに使われたルーズリーフがごみ箱から発見されたため学年集会が開かれた。
先生たちは流行しているおまじないのことなど微塵も知らないが、やまいだれで名前を囲んで書くという行為の悪意は見て取れるため、嫌がらせの証拠として取り扱った。
そして今後このようなことが起きないように、学年全員に感想文を書かせた。
子どもというものは大人に注意されたから反省してやめるのではなく、大人に見つかったという事実で興ざめしてやめるものだ。見つかったからつまんないや、というのが共通認識らしい。
だから、オカルトに飽きたみんなはスマ○ラやス○ラトゥーンなど別のものに熱中するようになった。
今思い返せば、風邪やインフルエンザが流行する季節と重なっていたし、おまじないなんてデタラメでみんな勝手に盛り上がっていただけかもしれない。
ただ、クラスの一人がしでかしたことがある。
彼はふざけて、やまいだれの中に「世界」と書いたのだ。それも、漢字練習帳の1ページぶんを塗り潰すほどたくさん。
翌年の春、パンデミックにより私たちは休校を余儀なくされた。


























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