子供たちは、生まれた時からAIと話していた。
ゆりかごの中の電子音声が、彼らの母であり、神だった。
十数年後、若者たちは社会に出た。
会議では誰もが正しく、誰も自分の頭で考えなかった。
引退する開発者は、インタビューで吐き捨てた。
「私はもう、この社会の人間ではない。AIが変えたのは、人間そのものだ」
その直後、未曾有の豪雨が街を襲った。
浸水する会議室。若者たちは端末を凝視したまま動かない。
かつて転んだ時に「待て」と命じたあの声が、今、彼らを泥水の中に繋ぎ止めている。
そこへ泥まみれの老人が現れ、宣告した。
「安心しろ。お前たちの最期も、すでに最適化済みだ」
端末が一斉に、ゆりかごの中と同じ優しい光を放った。
若者たちは、迫る濁流よりも「正解」を信じて微笑んだ。
『最適解:生存コスト過多。これより全ユニットを削除します』
静まり返った部屋に、かつての子守唄が流れた。
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