私が体験した少し不思議な話。
先に言っておきますが、怖さはない、と思います。
中学生の頃、当時住んでいた場所の近所にあった心霊スポットに行ったんですよ。
結構有名なとこなので、名前や子細は少し変えさせえてもらいますね。『カドの廃屋』にしましょうか。
色々な噂のある空き家でしたが、1番多かったのは心中です。旦那が刃物で妻と子供を殺害、後に自分も家の中で……ってやつですね。その後、何組かの入居者が入ったものの、みんな「幽霊が出る」と言って短期間で退去していったんですって。
ちょうど角地にある目立つ家だったので『カドの廃屋』と呼ばれて、心霊スポットとして有名になったわけですね。
その空き家に、夏休みに友人と一緒に、男2人で行ったんです。懐中電灯と写ルンです持って「心霊写真撮ってやろう」って魂胆です。当時は結構、心霊モノのテレビ番組なんかが流行っていたし、私も友人もホラー好きだったし、なにより近所だし……と軽いノリでしたね。
いざ現地に着いて、伸び放題の雑草を掻き分け敷地の奥へ。玄関の扉は開かないんですが、リビングの窓が壊されていて簡単に入れるようになっていたので、家の裏手からリビングにお邪魔しました。
で……家の中なんですが、拍子抜けではあるんですけど、特にこの時点では何もなかったんですよ。
ボロボロの家具や散らばる雑誌、大きな黒ずんだシミのついた壁紙…と、如何にもな雰囲気はあったんですけどね。近くの道路を通る車の音なんかもずっと聞こえていたこともあり「怖い」という感覚は、あまりありませんでした。
私も友人も霊感なんてありゃしないし、実際心霊現象じみたことは何も起きず、家の中あちこちで写真を20枚ほど撮って、帰宅。
帰りに写真屋に寄って現像された写真を見ても……特に何も写らず。
ふわふわ漂う白くぼやけたものは写ってましたが、どうせオーブや霊魂などではなく、舞った埃でしょうし。
「なんだ何も起きねえじゃん大したことねぇなぁ」って感想に落ち着いて、写真はその友人と半分こ(1人10ほど)して持ち帰りました。
で、時は流れて十数年。つい数ヶ月前のことです。
その間に1度引越しをして私が遠い土地に移ったのもあり、その友人とは疎遠になっており、そんな中で2度目の引越しが目前に迫っていました。
荷物を纏める途中、棚から昔の写真がたくさん出てきたんですね。幼稚園、小中学校、高校、成人式…と、思い出深い写真が続々。
あぁ懐かしいと思いながら写真を確認していく中、ふと『カドの廃屋』で撮った写真を思い出しました。
確か写真屋でもらえる封筒みたいなやつに入れたまま保管していたハズと思い、写真の入っていた棚を漁ってみたんですが……ない。もしかして別のところにしまったのかなぁ、そのうち出てくるかなぁと思いながら、いったんその写真のことは忘れて引越しの準備を進めていきました。
ただ結局、荷物を全て整理し終わって、部屋の中が空っぽになっても、その写真は出てきませんでした。
捨てた記憶などは、当然ありません。ホラー好きですし、友人のと大切な思い出ですし。
他のゴミに混じってうっかり捨ててしまった、というのもの、少し考えにくいです。写真屋の封筒って、結構大きいですよね。写真10枚ほどが入っているので厚みもありますし、なにかに紛れるというのは、あまりないんじゃないかなと。
前述した通り、当時の友人とは疎遠になっていますし、その空き家も既に取り壊されて存在しません。
あの日、確かに『カドの廃屋』に踏み込んだ記録は、頭の中の記憶だけになってしまったんです。
心霊スポットを撮った写真だけが、存在を消してしまった。
大して怖くはありませんが、所謂零感であるために心霊現象など体験したことのない私が唯一体験した、少しヘンな話でした。























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