これは私が中学生になったばかりの頃のお話です。祖父母の家で私の入学祝いをしようという話になって、祖父母の家に向かいましたが、私はあまり気が乗りませんでした。
というのも、昔から祖父母に
「4月の26日の夜には一人で外に”絶対に”出てはいけないよ」
と言われていたのですが、当時の祖父母の家はトイレが外にあったのです。私は頻尿で、夜にトイレに行けないと粗相をすることも少なくありませんでした。
そして、その日がまさに26日。中学生になってまで粗相をするのは恥ずかしいので、あまり祖父母の家に行くのは気が乗らなかったのです。
両親に日帰りにしてほしいとお願いしても、できないと言われるばかりでした。
理由をしつこく聞くと、「エタアツメの面倒を見ないといけない」とよく分からないことを言われました。
夜になると、父と母は出かけていきました。さっきの「エタアツメ」の面倒を見るのか。分かりませんが、異様な雰囲気を感じて怖くなりました。
祖父母の家にはWifiがなく、スマホもゲームもできないので、怯えながら夜を更かし寝る時刻になりましたが、両親は帰ってきませんでした。
そしてその頃です。自分の身体が尿意を訴え始めたのは。
さすがに粗相はしたくない。なので決まりを無視して外にあるトイレに向かいました。
トイレに入って用も足し終えた頃、何者かの声が聞こえ始めました。何と言っているのかわからなかったのですが、時間が経つとはっきり聞こえてきて、
「エタノコ、エタノコ、イル、イル」と言ってるのがわかりました。
その声の主はこちらに近づいてきている。
「エタノコ、エタノコ、イル、イル」
トイレから出て、祖父母にこのことを話すと、
「絶対に外に出るなと言っただろう!」と案の定怒っている様子でした。
エタノコとは。エタアツメとは。
祖母から話を聞きました。
祖母によると、昔この地域は近隣の部落への激しい差別を行っていて、あまりの激しさに穢多・非人と呼ばれた人たちが反発し地域の人間を殺して回ったそうです。それに怒った地域の人間は、穢多・非人を呪うために、穢多の家系の子、エタノコを生贄にして神に等しい存在、エタアツメを作り、崇めた。
そうした日が、4月26日。
穢多・非人という概念がなくなっても、エタノコの怒りは収まらず、今もその風習が続いている。
私は、穢多の家系の子、エタノコらしいのです。
話を聞いて、恐ろしくなりました。
あの時、エタアツメに集められていたら。
エタノコ、エタノコ、イル、イル。
あの声を思い出すたびに、身体が震えます。






















この話、大丈夫?