橋から落ちる
投稿者:黒糖 (1)
短編
2025/01/21
18:53
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“なぜオシャレな霊は存在しないのか”
たまにこんな話を聞くが、実際のところオシャレな霊もいるにはいる。
ただそういう霊は見た目が生きている人間とほぼ変わらないため、霊だと気づかれないのだ。
これはつい最近体験した話。
とある温泉地に観光に行った際に、いわゆる地雷系ファッションの女性がいた。
くすんだピンクのフリフリのブラウスに、黒いミニスカート、黒い厚底靴。
髪はツインテールにして毛先を巻いている。
温泉地ではあまり見ないタイプだ。
その地雷系の女性が、橋の下を覗いたかと思ったらまるで鉄棒で前回りをするようにクルッと回転し、そのまま橋の下に落下した。
「えっ!!!?」
慌てて駆け寄る。橋の下には川が流れているが、人の姿は見当たらない。
俺は近くの旅館に駆け込み、女性が落ちたことを伝えた。
すると女将さんが呆れたような顔で息を吐いた。
「ああ、また……驚いたでしょう。ごめんなさいね」
女将さんと一緒に外に出ると、橋の上にさっきの地雷系の女性がいた。さっきと同じように橋の下をぼうっと眺め、そして回転して飛び降りた。
「ずっと繰り返してるのよ、あの子。お祓いしたら居なくなってくれるのかしらね」
女将さんは呆れたように言った。
ちなみにその橋で自殺をしたり、事故で落ちた人はこれまでに一人もいないらしい。
あの女性にとって、この温泉地が思い出深い場所なのか、或いは因縁の場所なのか…
考えてもわからないことだが、早く成仏してほしいと思う。
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