裏山の祟り神?
投稿者:入道雲 (2)
私は子供の頃の記憶というのはあまり残っている方ではない。
割とどうでもいいことなんかは何故か覚えていたりするのだが、家族で旅行にいっただとかの記憶はほとんど断片的な記憶しか残っていない。単純に旅に興味がなかったりして覚えていないだけだ。
しかし、あの日の不思議なことだけはしっかりと覚えている。
その時私は小学校の3〜4年くらいだった。うちの家は九州北部のそんなに大きくはない山の麓にあって、家から出てすぐの道を上へ行くとそのまま山へ続く道となっている。
夏休みだったと思う。母と2人で裏山の頂上までハイキングしようということになった。弁当を母が作ってくれ、昼前くらいに家を出た。その山の頂上までは、だいぶガタガタではあるがアスファルトで舗装されていて、小学生でも30分もあれば着いてしまうような距離だ。
頂上までは道の脇はずっと竹林と広葉樹林が混在していて薄暗いが、そのおかげで夏日でもあまり暑くなく歩きやすかった。
頂上まではもう半分くらいのところで、車一台が入るくらいのスペースが道の脇に空いている。そこは背の低い草が生えていて昔は農家か山の管理者の人の駐車スペースか何かだったのだと思う。その頃にはもう誰も使っておらず草が生え放題だった。
そのスペースに赤黒い塊があった。居たのかもしれない。小学生の私より少し大きい。赤黒くて原型がギリギリ判別できるくらいの崩れ具合のものだった。母とおずおずとそれに近寄ってみると、横たわる猪か何かの死体のようだった。九州なので熊なんかはいないし、思い当たるのは猪くらいしかなかった。
母と私は気持ち悪いものを見た、とはなったがそのまま頂上へ向けてまた登って行った。頂上まであとわずかのところにある、顔が崩れ落ちて首と顎だけ残っているお地蔵様に手を合わせて頂上に着き、山の麓を見渡せる場所で昼飯を食べて帰ることにした。
帰り道は一本なのでまたさっきの猪?の横を通ることにはなるがおばけでもなんでもないので特に気にせず通り過ぎようとした。
だが、そこにつくとさっきまであった赤黒い塊は綺麗に無くなっていた。あれから1時間ほどしか経っていないはずなのにそれは無くなった。なにかがそこにあったのを証明するように、そこだけ草があまり生えておらず、土が見えていた。
急に背筋がゾクゾクとして、寒気がした。母も同じだったようで家まで走った。何事もなく家に着いた。単身赴任していて関西から一時帰宅した父にそのことを話したら蟻が運んでいったんじゃないかと笑われた。そんなはずないのは母も私もわかっているが、なんとも説明がつかないのでそういうことにした。
思い返せば、猪の死体なら全身に毛が生えているはずだし、あれは一体なんだったのだろうか。もののけ姫の再放送で祟り神のシーンを見るとふと思い出すのだ。
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