俺は……
投稿者:リュウゼツラン (24)
髪の毛が抜けた。大量に。
40歳を過ぎたあたりから一気に老ける人も多いと聞くが、まさか俺もそのパターンなのかと、明らかに薄くなり始めている頭皮を撫でながら自虐的に笑う。
童顔でもなければ肌ツヤも良くない俺は、別に特別若々しい見た目をしていたわけじゃないが、それでも年相応か、少しは若く見られていた気がする。
しかし、ここ数日、明らかに老け込んできている。
仕事の疲れか? あまり睡眠が取れていないからか?
思い当たる節はなくもなかったが、それでも笑えない位に老けている。
ストレスで髪が抜けるのはよく聞くし、目の下にクマができたりやつれたりで、老人みたいな顔になっている奴も見たことがある。
でも俺の老け方はそういう感じじゃない。
いや、老けているというか……これじゃあまるで別人みたいだ。
実際、職場に行くと同僚にもからかわれるし、守衛さんにも「入館証の顔と違う」と言われる位に変わっているんだ。
まぁ、そんなこともあるのかなと特に気にせず過ごしていると、一週間もしない内に俺はこの状況を楽観視していられなくなる。
実家に帰った俺を迎えた母に「どなたですか?」と訊かれたのだ。
母は70を過ぎてるし、いよいよ認知症にでもなったかと心配したが、俺が心配するべきなのはむしろ俺自身だった。
父も「勝手に人の家に入ってくるな!」と怒っているし、仲の良い弟も俺をチラッと見て部屋に行ってしまう。危うく両親に警察を呼ばれそうになり、慌てて逃げ出す。
確かに老けたけど、誰だかわからないってどういうことだよ。
だんだんイライラしてきたので、その日は帰ってふて寝することにした。
翌日出社すると、守衛さんに止められる。
「こちらのカードと顔が違うようですが」
昨日のこともあり、少し苛立ちを交えながら「いや、本人です」と半ば強引に守衛さんをどかすように押しのけ屋内に入ろうとすると、「待ちなさい!」と二人がかりで床に倒され抑え込まれる。
流れるような連携プレーで俺の動きを封じた守衛二名の内の一人が110に連絡し、俺は警察に引き渡される。
まさか警察沙汰になるなんて……と困惑しつつも、必死の説明でなんとか釈放される。
なんだってんだ一体。もうこの時間から会社に行ってもろくに仕事なんてできないだろうし、今日はもうひとりで飲みにでも行くか。
フラフラと街を歩きながら一人飲みができそうな店を探す。
早い時間からやっている適当な飲み屋を見つけ、注文したあとトイレへ行く。
そして鏡を見て俺は軽く悲鳴をあげる。
「誰だ、これ」
鏡には知らない人間が映っていた。
顔を触る。肌の感触はまるで別人だった。
いや、感触どころじゃない。髪の毛だってほとんどなくなってるし、目は落ち窪んで大きさも違うし、鼻の形も唇の暑さも、輪郭さえも全くの別物だ。
「なんだ……これ」
ゾクゾクする怖さが、あった。鏡に全く違う自分が映ったら、恐怖しかない。
おもれー