有名な首相の孫

これは私が小学生の時の出来事です。

私の家の周りは著名人が多く、有名なミュージシャンや俳優さんなどいわゆる一等地に住んでいました。
とは言え我が家は平凡な家庭であり、父母兄私の4人で暮らしていました。

中でも戦前に活躍していた総理大臣の孫の家は有名でした。
大きな家であるから有名な訳ではなく、家自体はうちと同じくらいの大きさでした。
なぜ有名だったかというと、家の外観はまるで廃墟、人が住んでいるとは思えなかったからです。
でも近所の噂ではそこに総理大臣の孫は確かに住んでいるとのことでした。
時々その家の前を通ると、玄関が開いていたので、確かに住んでいることは分かりました。
でもその孫のことを見たことがある人はあまりいなく、私もどんな人なのかが気になっていました。

ある日、友達が来た時にその話をしてみることにしました。
「近所に●●首相の孫が住んでいるんだけど、まるで廃墟になっていて誰もその人の姿を見たことがないんだよ」と私は友人に話かけました。
すると友人が「じゃあ、行ってみて確かめてみよう」と小学生ならではの怖いもの見たさで行ってみることになりました。
その家の周りには住居がなく、ぽつんと１軒家がある状態でした。
その日もいつもように玄関のドアが開いていましたが、人がいるような感じはありませんでした。

私の心臓はバクバクしていたのですが、友人が信じられないことを言い始めました。
「これ、中入ってみる？」
私はそれに対して断りました。
それでも食い下がらない友人は1人でその玄関へ向かいました。

私もいても立ってもいられずに、友人の背中に隠れて、家への潜入を試みました。
「すみませーん」少し面白そうに友人は玄関へと入ろうとしました。

その時でした。
全裸のおばあさんが奇声を発しながら鉄の棒を持って家の奥から出てきました。
正直何を叫んでいたか分からないのですが、身長150cmほどのおばあさんが私たちを追いかけてきました。
私たちはただ逃げるしかなく、半分泣きながらその家を後にしました。
初めて見た首相の孫はこの世のものとは思えないほど恐ろしかったです。
私たちがいけないことは分かっているのですが、人間の怖さを知りました。
特にオチはないのですが、兎に角私が経験した恐ろしい出来事です。