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不思議体験

わむさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

ピアノ教室の帰り道に立っている男の子
長編 2022/12/22 22:13 994view

私がまだ小学生だった時の話です。

毎週木曜日に、家から5分もかからない距離にある公園近くのピアノ教室に通っていました。そのピアノ教室は友達のお母さんが個人の家の一室で開いているピアノ教室で、近所の子供たちも多く通っていました。ピアノの授業は1対1のマンツーマンで、私はいつも学校が終わった後、大体5時ごろに家から通っていました。家から近いことと、住宅街にあることもあり、いつも一人で通っていました。夏は公園近くを通るので、よく遊んでいる子供がおりましたが、冬は夕方になるとすぐに日が落ち、家に帰る頃はいつも真っ暗。人通りもほとんどありません。私はいつも冬に一人で帰るのが怖く、なるべく急いで帰っていました。

ある冬の日、いつものようにピアノ教室が終わった後外に出ると、やはりすでに外は真っ暗、人の気配も全くありません。先生に「暗いから気をつけて帰るんだよ」と玄関で見送られたあと、公園を横切って家に向かおうと歩き出しました。すると、公園の奥の方に子供らしき人影が立っているのが見えたのです。いつも親には「知らない人にはついていっちゃだめだからね」と言われていたので、知らない大人とすれ違う時や、後ろから人が歩いてくる音がしたときなどは、子供ながらに気を付けるようにして歩いておりました。ただ、その時見えた人影が子供だったということもあり、その時は特に怖くもなく、走って帰ることはありませんでした。こんなくらい時間帯に子供が一人で立っているのもどこか不思議で、少し不気味な感じがしましたが、近くに住んでいる子供なんだろう、としかその時は感じませんでした。姿ははっきりとは見えませんでしたが、身長が大体100センチくらいの男の子だったように感じます。

次の週にピアノ教室に行く途中、先週見た男の子を思い出し公園を見てみましたが、その時は雪遊びをしているウィンドブレーカーを来た小学生らしき女の子たちが3人ほどいただけで、特に不審には感じず、内心ホッとしながら教室に向かいました。ピアノのレッスンが終わり、教室を出たあと公園を歩いていると、また公園の奥の方に先週と同じ格好の男の子のシルエットが見えました。「この時間帯にいつもいるのかな・・・引っ越してきたのかな・・・」と思いながらも、特に遊んでいる様子でもなく、立っているだけの姿に不思議に感じていました。

その次の週はその男の子はおらず、そのまた次の週はまた姿が見えることがしばらく続いたと思います。ある日同じピアノ教室に通っている同級生の女の子と、学校で休み時間に話しているとき、近々開催されるピアノ教室のミニコンサートの話しになりました。どんな曲を弾くのか、どれくらい弾けるようになったのか、お父さんお母さんは見に来るのかといった話しをしていたとき、いつもピアノ教室の帰りにみる男の子を思い出しました。その同級生の女の子は、私とは違う曜日に通っておりましたが、ピアノ教室に通う時たたずむ男の子を見たことないか尋ねてみました。同級生の女の子が通っている時間帯が、まだ日中の明るい時間帯ということもあったからか、特にそんな男の子は見たことはないと言われました。公園にただ立っているだけの姿が不思議に感じていることを話すと、その同級生に「もしかしてそれお化けだったりして~」と少し茶化した感じで言われました。「え~やだーまさか」と返しつつも、幽霊なんじゃないか、というその言葉を聞いて怖くなったのを覚えています。

そんな不安を感じながらも、またピアノ教室の日になり、いつも通り一人で向かいました。その日は、行きは誰も公園にはいませんでしたが、帰りに公園を見るといつもの男の子のシルエットが見えました。同級生との話しを思い出してしまい、ぞわぞわっと怖くなった私は走りながら公園を横切りました。見ないようにしつつもやはりどこか気になってしまい、チラチラとその男の子のシルエットを見ると、少しユラユラと横に揺れて動いているように見えました。余計に怖くなった私は急いで家路に向かいました。家まで100メートルほどの距離になった時、フッとどうしても気になってしまい、後ろを振り向くとその男の子のシルエットが電柱の横に立っていたのです。いつも公園の奥にあった姿が、自分を追いかけてきていると感じ、そのまま急いで逃げるように家に帰りました。
うちに帰ったあと、親にその話をしましたが、立っていたのが大人ではなく男の子ということもあり、「近所に住んでいる子なんじゃないの~」「遊んでほしくてついてきたのかもしれないよ」といった感じで、特に相手にはされませんでした。

電柱に立っている男の子姿を見た次の週、ピアノ教室が怖くなり「休みたい」と親に言ってみましたが聞いてもらえず、いやいやその日もレッスンに向かいました。発表会が近いのにも関わらず、ピアノのレッスン中も帰り道が気になり、まったく練習に身が入らず先生に注意されたのを覚えています。いつものように玄関で「気を付けて帰るんだよ」と見送られ、外に出るのが怖かったけれども、先生について来てほしいというわけにもいかず、教室を出ました。いないで欲しいなと思いつつ公園を見ると、そんな予感はしておりましたが、男の子のシルエットがありました。「見ない、見ない」と言い聞かせながら速足で公園を通り抜け、気になりつつも後ろを振り向かないように家に向かいました。家まであと少しのところで、家の近くにある建物の窓にボウッと薄暗く明かりが灯っているのが目の端に移り、ふっと横を見ました。すると、その窓の明りに公園の男の子のシルエットが映っていました。私は「ヒッ」悲鳴をあげ、走って家に帰りました。

それ以降は私があまりにも怖がるので、しばらく祖母に迎えに来てもらいました。男の子の姿を見たのはそれが最後でした。季節が夏になると日が長くなり、帰る時間帯も明るく、外で遊ぶ子供もいることもあり、一人で帰れるようになりました。そのあとピアノ教室はやめてしまったので怖い思いをすることはなくなりました。今思えば公園の男の子のことは考えすぎだったのかもしれないし、窓の男の子の影は同一人物だったかは分かりません。ただあまりにも怖かったことだけは鮮明に覚えています。

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