私が中学生だった時のことです。
怖い話や不思議な話は苦手な方でした。もちろん霊感や予知能力などはありません。毎日健康で病気をすることなく、ごくごく平凡で元気な中学生でした。
毎日平穏な日を送っていましたが、１２月ごろから１週間に１回の頻度で火事の夢を見ることが続きました。
その火事の夢にストーリーはなく、ただ知らない家が火事になって燃えている情景だけが映る夢でした。最初はたまたま見た夢だろうと気にもしていませんでした。
学校に行けば火事の夢のことは忘れて、いつものように過ごしていました。
しかし、１か月ほど続くと何か不安な感じがしました。なので親や友達に火事にあったことはあるか、火事の夢を見ることがあるんだけど何か思い当たることはないかなどと聞いてみることにしました。でも結局みんな口をそろえて、「不思議だよね。でも火事にあったことはないし、見たこともないよ。」という返事ばかりでした。
それでも不安でいっぱいだったので、親や友達には「火事に気を付けてね。」をしょっちゅう言っていました。
みんな、信じていないようでちょっと笑いながらだけど、気を付けるねと言ってくれていました。
そんな不思議な夢を見る日が続いてはいましたが、もちろん火事などは起こらず過ごしていました。
１月に入って私は生まれて初めてインフルエンザにかかりました。
高熱がでて食欲もないため１日中ほとんど寝て過ごしていました。ぐったりしていたため浅い眠りを何度も繰り返していました。
そんな時にまた、火事の夢を見たんです。今度はどこかで見た家が燃えていました。
いったいどこの家なのか。うちではない、おばあちゃんの家でもない、親戚の家でもない。どこの家だろうと考えていましたが、高熱のせいもあって頭が働きません。結局、また寝てしまい、どこの家なのかは思い出せませんでした。
１週間ほど学校を休みましたが、インフルエンザは完治して、また毎日学校へ行くようになりました。その時からあんなに頻回に見ていた火事の夢を急に見なくなったのです。
結局何だったのか分からなかったけれど、インフルエンザが治ったら見なくなったということは、インフルエンザにかかるのを注意しいてという意味だったのかと、自分で解釈しました。火事の夢を見なくなったおかげで夜もぐっすり眠れるようになったし、火事の心配もしなくてよくなったし、本当に気持ちは楽になりました。
そのためか、学校でも表情が明るくなって友達とも楽しく過ごせるようになりました。
火事の夢を見なくなって数か月がたち、４月になりました。学校ではクラス替えがあり、今まで仲の良かった子とは離れ離れになってしまいました。
それでもクラスにはお友達が出来ました。
特に４人のクラスメートとグループになり、いつも一緒に遊んでいました。
その中でも特にSちゃんという子とは特に仲が良く、学校から帰った後も連絡を毎日とっていました。毎日、学校でのこと、家でのこと、恋愛のこと、勉強のことなんでも話していました。
毎日楽しく過ごしていましたが、６月に入り、また、火事の夢を見るようになりました。もちろん新しいクラスで仲良くなった４人の友達に、火事の夢について話をしました。
みんな、怖いねと心配はしてくれましたが、火事にあったことはないし見たことはないと話してくれました。
やっぱり火事の夢は気にしなくていいのかなと思って、家に帰りました。
しかし、そのあとにSちゃんから電話がありました。「実は、みんなの前で言えなかったんだけど、私、小さい時に火事にあったことがあるんだ。詳しいことは憶えてないんだけど、家で寝てたら急にお母さんに起こされて、臭い、熱いと思って。抱っこされて急いで外に逃げたの。早く気が付いたからけがもなくって、家の火もすぐに消されたから、大丈夫だったんだけど。」と話してくれました。
その話を聞いて、知り合う前だったけどなんとなく通じるものがあって、私が夢を見ていたのかなと思いました。つらい思い出なのに、話してくれたＳちゃんには感謝しました。
その火事ではけが人もおらず、家も無事だったというので安心しました。
火事の原因については、Ｓちゃんは小さかったため、憶えていなかったのか、突き止められなかったのかは覚えていないということでした。
どちらにしても、火事の夢は、仲良くなったＳちゃんの体験をなぜか私が見ていたのだとわかり、久しぶりにすっきりした気持ちになりました。
私の火事の夢の原因も解決したところで、７月に入り夏休みになりました。友達みんなそれぞれ旅行や部活などに忙しい日々を送っていました。
そんなある日、私はインフルエンザ以来の夏風邪にかかりました。またまた、高熱です。
今まで風邪なんてほとんどひかなかったのに、なんでこんなに風邪ひくんだろうと憂鬱でした。
ご冥福をお祈りします。