流れてくる布

確か、親戚の法事の後だったと思います。

私は親せきの子供たち一同で川岸を歩いていました。

田舎の親戚のところまでやってきたので、せっかくだからと自然の中の散歩を堪能していました。

そしたら川にどんぶらこと流れてくる布のようなものを見つけたのです。

持ち前の運動神経で、私はひょいと流れてくる布を掴みました。

ただの布かと思っていたのに、拾った布は水を吸っているのか想像以上に重かったのです。

なにこれと思いながら私は布を川岸に引きずり上げました。

布は何かをくるんでおり、私はそれをみんながいるところで開いたのです。

ギャーっという声が聞こえました。

そして私を含めて、みんなそこから逃げだしました。

だって布にくるまれたのは冷たくなった赤ちゃんだったからです。

そのひんやりした温度と感触を今もよく覚えています。

私たちは慌ててその場から逃げて、近くの家の人に助けを求めました。

赤ちゃんが流れてきたと話したら、その人は血相を変えてその場に飛んで来てくれました。

しかし、私たちがあの布を拾った場所までたどり着くと、あの布は赤ちゃんごと、どこにも見当たらなくなっていたのです。

本当に数分の間の出来事でしたが、私含めて目撃者は5人もいたのです。

あれが見間違いなはずはないのですが、結局警察まで呼んで捜索したけど、あの赤ちゃんはどこからも見つかりませんでした。

私が大人になって聞いた話ですが、あの川の付近では生まれたての赤ちゃんが投棄された事件があったそうです。

私たちがあの日見た布にくるまれた赤ちゃんはもしかしたらそうやって、生まれた甲斐なく、儚く亡くなってしまった赤ちゃんの霊だったのかもしれないと今は思っています。