あなたはどこへ行ったの？

小学生の頃、友達と鬼ごっこをして逃げているうちに、とあるマンションに迷い込んでしまった。
よくある５階建てくらいでエレベーターの横に階段がある古いマンションだ。そこまで大きいマンションではなかったため、階段をダッシュで上ったものの、逃げ場がなくなり捕まってしまった。

疲れたねーなんて話しながら階段を降りていると前に女性が現れた。ゆっくり降りる女性の後ろを騒がしくお喋りを続けながらついて行く。１階についたとき、女性は廊下を左へ曲がった。初めて入るマンションだったため出口を把握していない私は、女性に追随して左へ曲がった…はずだがそこは行き止まり。３秒ほども差がなく曲がったはずが女性はおらず出口もない。何が起こったかわからずパニックになりながら、ぎゃーっと叫んで反対側の出口へ走って行った。友達と小学校まで走って逃げ、その日は泣きながら帰宅した。

その後友達とマンションにもう一度行ってみよう、ということになり探してみたが、マンション自体が見つからなかった。私は１０年以上経ってもあのマンションとあの女性を鮮明に思い出すことができる。

…しかし、私は誰と遊んでいたのだろうか。運動が苦手で体が弱い私がなぜ鬼ごっこをしていたのだろうか。本当に私はマンションに逃げ込んだのだろうか。この記憶は一体何なのだろうか。わかることは１つ、あの女性の影はずっと私の記憶を支配しているということだ。