夢の中で呼ぶ人
投稿者:クラウディア (1)
これは、祖父が死んでまだ間もない時の話。
私はおじいちゃんっこで、夏休みなどの長期休暇の際、
必ずと言っていいほど、田舎の祖父の家へと遊びに行っていた。
釣りや竹とんぼ、川遊びなど、様々なことを教えてもらったけれども、
唯一、裏手にある山の中へだけは入ってはいけないと、口を酸っぱくして言われていた。
なんでも、裏の山の中にはイノシシが住んでいて、
子供を見ると、容赦なく襲い掛かってくるから、だとか。
私も社会人になり、祖父が危篤となった知らせを受け、母親とともに向かったが、
すでに、祖父は病院で息を引き取った後だった。
泣いた、とにかく泣いた。
これでもかというほどに泣いて、葬式が始まるまで、
よく遊んでもらった、川のほとりでたたずんでいた。
そして、ふと思い出したのが、祖父が行ってはいけないと言っていた裏山。
もういなくなったことだし、私も子供じゃなくなったので、
せっかくだし入ってみようと思い、翌日の朝に登ってみた。
すると、中腹ほどにだろうか。
小さな鳥居のようなものがいくつもたっており、その奥には
古びたお社のようなものがあった。
なんだろうと近寄ってみても、すでにそれは壊れた後で、残骸となっている。
それに近寄ってみると、何やらお札のようなものが張られた箱が一つ、置いてあった。
さすがに持ち帰ろうとは思わず、私はそれを見た後で帰ったのだが、
その日の晩、祖父が夢の中に出てきた。
すごく怒っているような顔で、あの箱のことを聞いていた気がする。
私は首を横に振ると、祖父はほっと安心したような顔をして、
「あの箱にゃ触れるなよ」
とだけ言って、あとは何も言わずに歩いて行ってしまった。
後日、ネットでいろいろと箱のことを調べてみると、
「コトリバコ」なる物の記事を見つけた。
まさかと思い、私は後日もう一度山に登って、よくよくその箱を眺めてみると……。
それ以降、私はその山に登っていない。登れない。
あの箱の正体を知ってしまったから、もう登りたいとは思わなかった。
今、あの箱が一体どうなっているのか…知る由もない。
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