初夏の暗闇
投稿者:castaway (5)
その日は友達と2年ぶりに会う日だった。
久々に会う友達Aは小麦色に焼けた肌で、蝉より早く私に夏を伝えにやってきた。
Aと遊ぶときは決まって行き当たりばっかりで、その日は神奈川の南東部にある神社に行くことにした。
SNSで調べたその場所は、伏見稲荷のように朱色の鳥居が神秘的に並んでいて、胸を膨らませて2人で向かった。
近くのコインパーキングに車を止め、田舎の参道を歩いて目的地を目指すとそこにポツンと小さめの鳥居が道のわきに現れた。
友達と目を合わせ、ごくりと唾を飲み込みながら鳥居をくぐり細い山道を進むことにした。
山道は緩やかな傾斜で木漏れ日と涼しい風が仕事の疲れ洗い取ってくれるような気分で単純に森林浴を謳歌した。
「わっ!」と後ろにいた友達が急に声を上げる
後ろを振り返ると、木の根に引っかかって転んだ友達がいた。
転んだ友達を笑いながらふと空を見ると、日が傾いていた。
登り始めたのが遅かったのもあり、数分後にはスマホのライトが無いと足元が見えなくなっていた。
「もう日が暮れてきたし引き返そうか。」と私が言うと、
「きっと、もう鳥居はそこら辺だから、少し見て帰ろうよ。」と友達が楽しそうに言ってきた。
私は渋々、友達と道を進んで行くことにした。
山道を日が沈んでから15分ほど歩いても鳥居は見えないので、
「なぁ、そろそろ諦めないか?」と私が提案すると、「そうだな…さすがに帰ろうか」と友達は言う。
後ろを振り返った瞬間、全身の毛が逆立った。
左手側に、綺麗な朱色の鳥居が連なっていた。
恐る恐る、鳥居をくぐりながら階段を登っていく。
10分くらい登り始めたところで、友達が、
「怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。」
と震えだしたので急いで友達に肩を貸しながら、一目散に車まで戻った。
その頃にには友達は我に返っていたが、鳥居に上った時のことはあんまり覚えていないらしい。
スマホ撮っていた動画を見返すと、目の前にいた友達も映っておらず、そこに映るのは鳥居と奥まで続く深い深い闇だけだった。
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