手鏡に映る綺麗な女性

私の仲が良かった友人が、別れた彼氏との思い出の品を処分すると言いました。

それを手伝ってほしいと頼まれて、私はちょっとお手伝いしたのです。

すべて処分してスッキリしたい友達とは裏腹に、私は随分高価なものも多く、ずっと「勿体ない」と言いっぱなしでした。

その彼からもらったものの中の一つに、珍しい煌びやかな柄の手鏡があったのです。

私はお手伝いする代わりにいくつか処分するはずだったものを報酬としてもらいました。

その中にこの「手鏡」があったのです。

私は細工がとても綺麗な手鏡を気に入り、よく持ち歩くようになりました。

しかし、使っていて突然動きが止まることがあります。

理由は手鏡の中に、たまに知らない女性が映りこんだからです。

その人は30代くらいのとても品がある人で、その人がじっとこっちを見ている姿を何度か目に留めて、怖くなりました。

そこで友達からこの手鏡はプレゼントなのか聞いてみたら、友達は「ああ、そういえば彼の祖母の形見と言っていたかも」と言い出しました。

私はそれを聞いてより恐怖を感じました。

そして友達に「絶対、返したほうがいいよ」と念押しして、その手鏡を返したのです。

それから半年足らずで、友達が大きな交通事故に逢いました。

慌てて、お見舞いに行って友人の入院している部屋を探す途中で、着物姿のかなり綺麗な人とすれ違いました。

私は一瞬なんだか見たことがある気がして、首を捻りました。

しかしすぐには気づけず、そのまま友達のいる個室を尋ねました。

友達は無事ではあったものの、全治数か月の重傷で、かなりふさぎ込んでいました。

友達が「事故に遭う前に着物の女性を見た」というのです。

私はそれを聞いて、さきほどすれ違った女性を思い出しました。

そしてはっとしたのです。

よく思いだしてみるとすれ違った女性はあの手鏡の中に映った女性とそっくりでした。

病院の中ですれ違った話をすると友達は見る見る顔色が悪くなりました。

友達はそれからすぐに元カレを呼び出して、手鏡を返したそうです。

あの手鏡はきっと何か曰くのものだったと思います。

そしておそらく元の持ち主の手に戻りたがったのではないでしょうか。