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心霊

埜威さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

後ろ姿の真相
短編 2022/03/23 23:19 1,970view

私の母は三姉妹の長女でその長女が私。初孫で跡取り。その後産まれた従兄弟達とは今でも仲良くしているが
その中でも私だけが知っている大切な従兄弟の話をしたい

当時、妹2人の嫁入り先はそれぞれ地元から離れた県外。次女である叔母は埼玉の三郷に住んでいて借家の二階建て一軒家だった

母が正社員で働いていたので、子守りの祖母は頻繁に叔母の家に私を連れて行った。叔母は専業主婦だった。車の運転が出来ない祖母なのでバスや電車に乗る事が私は楽しそうだったらしい

らしい。と書いたのは正直私の中でその記憶はほぼ無い。2歳やそこらの幼児期の記憶なんてそんなものだ
そして祖母から聞いた様子なので幼子を自分の用事に連れ回した祖母の希望的思い込みもあるだろう

そんな中で何故か叔母の家に行くと「まーくん」と遊べる。という記憶がハッキリと残っている。まーくんはいつも二階にある二間続きの部屋の奥にいた

祖母は話好きな人で子育てに無頓着な人だった。伯母も嫁に行ったばかりで母が恋しかったのかもしれない
二人は茶飲み話に夢中で私は度々放置された。好き勝手に叔母の家を探索し、誰も止めないので2歳児が階段を一人で登って毎回まーくんと遊ぶのだ

何をして遊んだかはあまり覚えていない。ただ、まーくんの姿は今でも鮮明に思い出せる
歳は幼稚園児位で、ツヤツヤの直毛を綺麗に揃えたマッシュルームな髪型、青い半ズボンを履いている

二階に登ると最初は部屋の角に向かって座っているが、声をかけると振り向く顔はいつも笑顔だった。私の三郷での子守りはまーくんだったと言っても良いくらいだ
私が放置の間遊ぶ用に買い与えられたパズルや絵本を一緒にやっていた気もする

母曰く、私は何度かまーくんの話を家でもしていたらしい。母は近所の子?程度に思っていたと言う。現に母は私が話した名前を覚えていなかった

話は戻って、それから2年程経って母が妹を出産した。4歳離れた妹だ。その3ヶ月後三郷に住んでいる叔母が里帰り出産で大きなお腹で家に帰って来た
叔母は男児を出産した。ガラス越しに見た赤ちゃんはとても小さく箱に入っていた。保育器だ。私はなんで箱に入っているの?出られないの?と聞いたらしい

男児は我が家に来る事は無かった。心臓に問題があり産まれて1週間後病院で他界したからだ。その後暫く叔母は家にいたが、いつの間にか三郷に帰って行った。私も保育園に入り三郷に行くことは無くなった

その1年半後、また三郷の叔母が家に来た。大きなお腹で。今度は大きな(巨大児だった)男の赤ちゃんを連れて無事に我が家で産後を過した。その後三女の叔母も出産して、従兄弟や従姉妹が増え私の中で遠い昔の話は消えていた

私が小学生になりたての頃、三郷の叔母が叔父の転勤を切欠に地元に家を建てた
そのあたりだったろうか、墓参りに行くとこっちにもお線香をあげなさい。と先祖の墓から少し離れた区画にある小さな新品のお地蔵様を教えられた
それがお墓なのはなんとなく察したし、誰の?という言葉も言ってはいけないような気がして聞けないままだった

それからしばらく経って母にやんわりと聞いた。あのお地蔵様はなんなの?と。すると

まさよしのお墓だよ

1週間で天国に行ってしまった従兄弟の名前をその時初めて知った。大人になった今思うに転勤して地元に家を建て、お墓を建てるまでまさよしは叔母の家で供養されていたのだろう

その名前を聞いた途端、忘れていた幼い頃の思い出が溢れ出した。なぜ今まで忘れていたのだろうと思う位、とても鮮やかにハッキリとした記憶だ。上記の私が三郷で近所の子?と遊んだ話をしていた。も、この時に聞いた話だ

今では公認の名前で、親族はみんな「まーくんのお墓」と呼ぶ。まーくん。私にはとても大切な名前だし、私の思うまーくんはまさよしじゃないかもしれない。それでも巨大児だった従兄弟が成長すると私の思い出の姿にとても似ていたのは事実だ

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