誰も知らない神社
投稿者:誠二 (20)
短編
2022/03/21
21:09
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祖母が住む田舎に帰省した時の出来事です。
両親たちや大人の話に退屈した私は、一人でぶらぶら散歩にでかけました。祖母の家の近所には田んぼや用水路が多く、虫を追いかけて自然と山のほうへと迷い込みました。
しかし昆虫採集に夢中になるあまり迷子になり、鬱蒼とした山道の真ん中で途方に暮れます。
「あれ、あんな所に神社?」
行く手に現れたのはボロボロの鳥居でした。奥には粗末な社が見えます。不思議に思って近付いてみると、夏場にもかかわらず妙にひんやりした風が頬をなでてぞくりとしました。
なんかここ、気持ち悪い。
思わず二の腕をこすってあとじされば、くすくす、くすくすと笑い声が聞こえてきました。
誰かが見ている。
反射的に視線を上げ、社の格子戸を睨みました。そして目を疑いました、格子戸の細い隙間から小さな手が招いているのです。
しかしその手の爪は異様に長く、肌の色はがさがさに乾いた茶色で生きてる人間とは思えません。
私はすっかり肝を潰して家に逃げ帰りました。
後で家族に聞いてみた所、山の中にそんな神社はないそうです。私は自分でも知らないうちに異世界に迷い込んでしまったのかもしれません。
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